サクラ大戦 血塗られた戦い(第2話)  作・ボケorツッコミ

第2話 「戦士の誇りそして決意」

 ここはシャノワールの地下作戦司令室。大神や巴里華撃団の面々、グラン・マにメルシー、で昨日の夜の怪事件騒動について会議が行われていた。

「以上が昨日の事件についての報告です」
「なるほどね〜じゃあムッシュ達が会ったその男が近頃頻発している怪事件の犯人と
いうことだね」
「ええ、犯行の手口からいってほぼ間違いないと思います」

 話をだまって聞いていた巴里華撃団のなかでコクリコだけがこの時震えていた。大神と共にあのおぞましい光景を見たはコクリコだけだ。

「これじゃまるでヴァンパイアだね」
「ヴァンパイア・・・・・・・?」

 大神は首をかしげる

「おや、知らないのかいたまには本も読んだ方がいいよムッシュ」
「はぁ・・・・・」
「ヴァンパイアの本ならあたし読んだ事ありますよぉ〜」
「わたしもあります」

 メルとシーがこたえる

「私も読んだ事があるぞ」
「私も少し・・・・・なにか怖いはなしだった気がします」

 一瞬つめたい空気が流れたような気がした

「で、どうするんだい」

 沈黙をやぶったのはロベリアだった

「そうだね〜いつまでもここで話していてもしょうがないしね、ムッシュこの件はこっちで調べてみるからムッシュはひきつづき付近の見回り頼んだよ」
「はい」
「あんたたちも気をつけるんだよ、どこからねらってるかわからないからね」
「はい!」

5人が返事をする

(ヴァンパイアか・・・・・・・)

☆ ☆

 数日後の朝・・・・・・・・

 大神はいつものカフェで朝食をすませていた

(結局昨日の夜も怪人が現れなかったが、どうしたものか・・・・・・)

 大神は悩んでいた正体不明の怪人、それを目の前にしてなにもできなかった自分・・・

(あれはどう考えても人間ではないグラン・マはヴァンパイアとかいっていたが)
「隊長!」

大神が振り向くとそこには大神を呼んだグリシーヌを含め5人全員が立っていた。

「どうしたんだいこんな朝早くからみんなそろって」
「怪人についてなにか分かった事はないかと思ってな」

 全員の目が大神に集まる。

「ゴメンまだなにもつかめてないんだ・・・・・・・」
「そうか・・・」
「大神さん顔色悪いですよ、だいじょぶですか?」
「大丈夫だよエリカくんちょっと寝不足なだけさ」

 大神はあれからというもの毎晩おそくまで見回りをつづけている。それが自分の出来る唯一の事と考えたからだ。

「いったい何者なんでしょうねあの男・・・・なにやら邪悪な気を感じましたわ」
「ボクもなんかやな感じがしたよ」
「あの野郎今度は絶対しとめてやる」

 ロベリアは前回怪人にあっさりぬかれてしまった事を根にもっていたようだ。

「とにかく今はまだ下手に動かないほうがいい奴の事は俺にまかせてくれ」

 大神の目にその決意がみえる。

「わかりました・・・・大神さんも気をつけてくださいね」
「そうだ隊長が倒れてはいざという時に指揮するものがいなくなるからな」
「そうだよイチローちゃんと寝ないと元気でないんだよ」
「ああわかった、ありがとうみんな」

 微笑む大神それをみて5人も安堵の表情を浮かべる。

 ・・・・・・・・・・しばらくして
 5人が帰り1人になった大神は少し冷めたコーヒーを飲みながらため息をついた。

「ああは言ったがどうしたものか」

 大神が立とうと思ったそのときだった・・・・・・・・・

「ジヤ〜ン・・・・・」
「!この音はまさか・・・・・・・」

 大神が振り向くとそこには白いタキシードを着た男が立っていた。

「加山!」

 加山雄一。隠密部隊月組の隊長であり大神が海軍にいたころの同期。黒鬼会との戦いの時からなにかと大神を助けてくれていた。

「朝はいいな〜朝は一日の始まり、希望の日を告げる。そう思わないか大神ぃ〜」
「加山おまえどうしてここに・・・・・・」

 もはや加山がいきなりでてきても大神は驚かない

「実は米田司令から連絡があって。な近くまできていたんで様子をみにきたんだ」
「そうか米田司令はもうこの事を知っているのか」
「ああ、伯水大使から連絡があったらしい」
「そうか・・・・・・」

 大神は不安の色を隠せない

「まあそう暗くなるな大神、おまえがそんなんだと花組全体の士気が下がるぞ」
「ああそうだな、俺ががんばんなきゃな・・・・・・」
「そうだそうだ元気だせ〜大神ぃ〜『古人いわく敵を知り己を知れば百戦危うからず』まずはあせらず敵の正体を確かめるのが先決だ大神」
「ああわかっている、しかしまだなんの手がかりもつかんでないんだ」
「そ・こ・で・だ大神こんなもんを用意した」

 そういうと加山は何枚かにとじられた紙束をさしだした。

「これは・・・・・」
「ヴァンパイアについての資料だ」
「加山おまえ・・・・・」
「なぁ〜に事のついでにな」

 加山はそういうとふりかえった。

「そろそろ時間だ、じゃあな大神アデュー」

 2、3歩あるくと加山は足を止めた。

「そうそう大神、今回帝国華撃団の助けはこないぞ」
「えっ!」
「米田支配人のはからいだ。『自分の花嫁くれぇ〜自分でまもりやがれ』だとさ」

 総司令という地位こそ大神に渡したが米田一基は帝劇の支配人として生活している。

「そうか・・・・・・」
「まあとはいえあの子達の事だそんなことおかまいなしに、会いにきちゃうかもな」

 二人の間で初めて笑いがおこった。

「それじゃ〜な大神。今度こそアデュー」
「加山・・・・・・・」

 自分はいい友をもった、大神はあらためてそう思うのであった。

「どれどれ・・・・・」

 大神は椅子に座りなおすと新しいコーヒーをたのみレポートをめくった。

「なになにヴァンパイアは日本でいう妖怪や化け物の類で人間の血、とくに若い女性の血を好んで吸う・・・・・か確かに怪事件と一致している」

 そこにはヴァンパイアについていろいろと書いてあった。血を吸った相手になんらかの種をうめこむことにより自分の配下にできる事、神の力を恐れるため十字架を嫌う事、そしてなぜかニンニクの臭いを嫌う事、バンパイアの体は不死身であり首を切って大量に出血させないかぎり死なず、その魔力を完全に封じるには胸に純銀のクイをうつ必要があることなど、ことこまかく記してあった。

「なるほどやっかいな相手になりそうだな」

 大神がコーヒーを飲みほし、席を立とうとしたその時だった。

 ピリリリリリリリリリリ

 それは大神の携帯キネマトロンの着信音だった。大神はあわてて受信画面を見る。

「シャンゼリゼ通りに妖力反応あり至急集合されたし・・・・・」
「いよいよ来たか!!」

 大神はシャノワールに走った。
 地下にはすでに全員が集合していた。

「遅くなりました・・・・・」
「きたねムッシュ、メル映像をスクリーンにだしな」
「ウィ、オーナー」

 正面スクリーンにシャンゼリゼ通りの映像が写しだされた、逃げまどう人々の真ん中に明らかに妙な行動をしている男がいた。

「あれは・・・この前の男とはちがう!」
「仲間がいたということでしょうか?」
「怪人はシャンゼリゼ通りで女性一人を襲い、今警官隊と接触したようですぅ〜」
「グラン・マすぐに出撃します」
「いっておいでムッシュ、たのんだよ」
「はい!」

 そういうと大神はくるりと振り返った。そこには5人の隊員がいる。

「久しぶりの戦闘だ、みんな準備はいいか?」
「もちろんだ、このグリシーヌ・ブルーメール、常に鍛練はおこたっていない」
「ボクもいいよイチロー、ボクたちで巴里を守るんだ」
「私もお供します。大神さんなんなりと・・・・・」
「ちょうどむしゃくしゃしてたところだ。腕がなるね〜」
「いきましょう、大神さん」
「よしっ。巴里華撃団出撃!!」

☆ ☆

 ここはシャンゼリゼ通り。突如として現れた怪人に警官隊が応戦している。

「そこの男止まれ!」

 しかし、男は警官隊に向かって歩いていく。

「くそ、撃てー!!」

 警官隊が一斉に発砲する。しかし弾が何発かあたっているはずなのに男は平然と歩いてくる。

「ばっばかな!」

 警官隊が恐怖のあまり後ずさりする。

「怯むな撃て、撃てー!!」

 男はかるく手を振った。すると黒い風が吹き警官隊を蹴散らした。

「だっだめだ、退却!」

 逃げる警官隊とエビアン警部。それを見て男が手をもう一振りしようとするその時だった。

「そこまでだ!!」

 ボンという音とともに白、赤、青、ピンク、緑、黒の爆炎が上がる。その中から大神
が乗る光武2式と巴里華撃団の乗る光武F2が現れた。

「巴里華撃団参上!!」

 6体の光武がポーズをきめる。

「貴様!いったい何者だ!!」

 叫ぶ大神、しかし男からの返事はない。

「こいつ・・・・・隊長さっさと殺っちまおうぜ」
「まてロベリア、まずは相手の様子をみるんだ」

 その時、男はまた手を振り黒い風を起こした。しかし光武にはそんなもの通用しない。

「くくくっおもしろい。少しは楽しめそうだな」
「しゃべった!・・・・・・」

 男は怪しい笑みをうかべると、なおもしゃべりだした。

「我が名はヴァンプ、高貴にして偉大なる吸血一族の末裔・・・・」
「ヴァンプ・・・だと」
「吸血一族って・・・・・」

 華撃団は動揺した。

「貴様らの力見せてもらおう」

 ヴァンプほそういうと腰についていた剣を抜いた。その剣はサーベル状のもので刃は
まるで血のように赤かった。

「闇に巣くいし我がしもべ共よ、我が声を聞き我が命に従え・・・・・」

 そういうとヴァンプは剣を天高く掲げた。

「なにをする気だ?」

 大神が警戒しているとスピーカーからメルとシーの声が聞こえてきた。

「大神さ〜ん気をつけてくださぁい」
「シャンゼリゼ通りに強力な妖力が集まっています」
「何っ」

 するとシャンゼリゼ通り一帯がまるで夜のように暗くなり、その暗闇から何体もの怪
物が現れた。

「大神さん・・・・・・」
「イチロー・・・・・・」
「どうする隊長?・・・・」
「こいつは降魔・・・いや違うコウモリの化け物か?」

 闇がはれるとヴァンプは剣先を大神たちに向け叫んだ。

「さあいけ!我がしもべ、ダースよそのもの達を食らいつくせ」

 そういうとダース達が一斉に大神たちの方を向く。

「大神さん!」
「よし全員戦闘態勢!!」

 大神の掛け声で全員がかまえる。

「俺とグリシーヌが切り込む、コクリコとエリカ君は後方支援だ!」
「了解!」

 3人そろって応答が返ってくる。

「ロベリアは俺達が敵を引き付けている間に、後ろにまわって奇襲をしかけるんだ!」
「なるほど挟み撃ちねぇ〜。卑怯なところが気に入ったよ」
「よし、花火君はロベリアのサポートを・・・」
「わかりました・・・・・」
「みんな敵の力がわからない慎重にいくんだ」
「了解!」

 6体の光武が大きく散開する。

「うおぉぉぉぉ〜!!」

 大神機がダース群に突っ込んでいく。

「はあぁぁぁぁ〜!!」

 グリシーヌもそれにつづく。

「やあぁ〜!!」

 大神のシルスウス鋼の刃がダースを切り裂く。

「・・・・やったか?」

 だがダースは致命傷をうけたのにもかかわらず、まだ向かってくる。それどころかよくみると傷がふさがっていっている。

「何!!」

 完全に意表をつかれた大神は一瞬防御が間に合わなかった。
 攻撃を受けきれなかった大神機は1〜2m吹っ飛ばされる。そこにすかさずダースが追撃をしかける。

「くっ・・・・・」

 もうダメかと思われたその時、突然の爆風がダースを吹き飛ばした。

「大丈夫、イチロー!」
「大神さんしっかりしてください!」

 寸前のところでコクリコとエリカが援護してくれたらしい。

「ああ大丈夫だ、助かったよコクリコ、エリカ君」

 蒸気をあげて大神機が起き上がる。直撃しなかったとはいえ多少のダメージを受けたようだ。

(どうやら光武は大丈夫なようだが、ダースとかいったか攻撃力、防御力そして なによりその生命力、降魔や魔装機兵とはくらべものにならない)

「気をひきしめなくては」

 戦闘をはじめてもう30分はたっただろうか。だが、敵の数はほとんど減っていない。それほど多くないはずなのだが、いっこうに撃破数が伸びていない隊員達にもあせりがみえはじめている。

「そこです!!」

 花火のはなった矢がダースに突き刺さる、だがやはりまだ向かってくる。

「きゃあ!!」

 間一髪のところでグリシーヌが駆けつける。

「こいつ!!」

 全力で体当たりして、そのままいっきにたたみこむ。

「だいじょうぶか花火?」
「ええ、ありがとうグリシーヌ」
「敵は手強いぞ、ぬかるな!」
「ええ、いきましょう」

 一方では・・・・

「ひぇ〜こっちこないで〜」
「こいつ、この〜」

 エリカとコクリコも苦戦していた。後方支援のはずだがダースの防御力のまえに危なく接近戦までもつれこまれそうなくらいだ。ロベリアもうまく戦ってはいるのだがダースの驚異的な回復力のまえにとどめを刺しきれずにいた。
 その中で華撃団の戦いぶりをみて一人ほくそえんでる物がいる。ヴァンプだ。
 戦闘に参加する事もなく、退く事もなく建物の上から眺めている。
 そして今ヴァンプの目線は一人の男に向けられていた。そう大神一郎だ。戦闘を始めて大分たつというのに大神の動きは鈍くなるどころか数分前よりも速くなっていた。

「うおぉぉぉ〜」

 大神は襲ってくるダースに一太刀くわえ、さらにこれでもかともう一撃くわえる。これではさすがのダースもひとたまりもなかった、他の隊員たちも少しずつではあるが敵をおしてきていた。

(よしだいぶ要領がつかめてきた。ダースの動きがみえてきたぞ)

 その時だった・・・・・

「くっくっくやるな巴里華撃団とやら、だがその力見切ったぞ。ダースどもあの男をねらえ」

 ヴァンプの指したさきには大神機の姿があった。そう聞くや否やダースはあっという間に大神機を取り囲んだ。

「くっ囲まれたか・・・・だったら」

 大神は刀を構え霊力を集中させた。

「浪虎滅却・・・・・・・」

 天にかざした刃が赤く光る。

「くらえ・・・疾風迅雷!!」

 刀に赤い稲妻が落ち周りの敵をなぎ倒す。だがこの技をくらってもダース達はまだ立っていた。

「くっ・・・・・・」
「まったくしょうがね〜な」

 大神の前に突然ロベリア機が現れた。ロベリア機は光学迷彩とステレス装甲をもち奇
襲や隠密行動に優れた機体だ。味方機とはいえいきなり前に現れると少し驚くものである。

「ロベリア!」
「みてらんないよ、さがってな隊長」

 ロベリア機の爪先に青白い炎が現れる。

「フィアンマ・ウンギア!!」

 放たれた炎がダースを呑み込む。

「助かったよロベリア」
「隊長この借りは高くつくぜ」
「なんだよ、またボーナスか?」
「いや、あたしが欲しいものはそんなものじゃないさ」
「じゃあなんなんだ!」
「ふっ自分で考えるんだな・・・・」

 鈍感な大神は首をひねるしかなかった。
 そんなことをしている間に残ったダースがグリシーヌ達に倒されていった。

「グロース・ヴァーク!!」
「マジーク・ボンボン!!」
「北大路花火一の舞・・・・金枝玉葉!」

 事件発生からすでに1時間半全員体力も気力も限界近くにきていた。

「あとはおまえだけだヴァンプ!」
「みごとだ巴里華撃団!!」

 ヴァンプは建物から飛び降りるとフワリと着地する。

「勝負だヴァンプこの巴里は俺達巴里華撃団が守る」
「いいだろう、みるがいい我が暗黒の力を」

 そういうとヴァンプは赤いサーベルを構える。

「闇に巣くいし魔の住人どもよ、黒き風となりて我が刃に宿れ」

 血のように赤かった刃が暗黒に染まっていく。

「ブラック・ダスト!!」

 たちまち黒い霧が大神達を呑み込む。

「なに、この感じ・・・気持ちわるい・・・・・」
「なんだ・・・・体が動かない・・・・」
「力が・・・はいんないよ〜・・・・・」
「くそっなんだっていうんだ・・・・」
「なんだか気が遠くなる感じがします・・・・」
「くっみんな、だいじょうぶか?」

 黒い霧がはれても大神達は動けなかった。

「はい、なんとか・・・・」
「だが、このままでは・・・・」
「イッイチロー・・・・」
「あの野郎・・・・」
「大神さん・・・・」

 ヴァンプはサーベルを鞘におさめた。

「ふっ所詮はこんなものか・・・・・・」
「くそっ・・・・」

 長時間の戦いの上に必殺技をまともにくらった大神たちにはもはや光武を動かす力は残ってなかった。

「こうなったら・・・・」

 大神があるボタンを押そうとしたその時、画面の端から一つの影がすぎさった。グリシーヌだ。光武が動かせない以上光武からおりて戦うことは容易に思いつく事だ。
 現に今大神が押そうとしたボタンは「非常脱出」のボタンだった。

「はあぁぁぁぁーー」

グリシーヌはいつも持っている愛用の斧でヴァンプに切りかかる。

「無茶だグリシーヌ!」

 ヴァンプもサーベルを抜き応戦している。

「くそ、みんなは光武の中で待機いいかくれぐれも出るんじゃないぞ!!」

 そう叫ぶや否や大神も光武から下りヴァンプに向かって走っていく。
 一方、意を決してかかっていったグリシーヌだが、力の差は明らかだった。グリシーヌもかなりの腕なのだがヴァンプはそれ以上のものだった。

「くっおのれ!」

 静かになったシャンゼリゼ通りに鈍い音が響く。

「筋はいいがまだまだだな・・・・」
「何を・・・・」
「グリシーヌ!!」

 大神が神刀滅却をぬいて走ってくる。

「あの男の方が強そうだな」

 ヴァンプの矛先が大神に向く。

「だまれ!貴様の相手は私だ!!」

 グリシーヌが渾身の力を込め斧をふりおろす。ところがあっさり受け止められ、それどころか反動で体勢が崩れた。

「うるさい身のほど知れ!!」

 ヴァンプの強力な一撃。

「ガキャン・・・・!!」

 なんとか斧でガードしたが、けたたましい音と共に吹き飛ばされた。

「グリシーヌ・・・・くそっ」

 今度は大神が斬りかかる。
 ヴァンプの赤いサーベルと大神の白刃の日本刀、二人の実力はほぼ互角といったところだった。

「ふははっおもしろい、おもしろいぞ私とここまで斬りむすんだのはおまえが初めて
だ」

 ヴァンプは戦いを心の底から楽しんでいるようだ。

「今だ!」

ヴァンプがみせた一瞬の隙を突いて大神がヴァンプのサーベルをはじいた。

「もらったーー!!」

 大神の神刀滅却がヴァンプの体を切り裂く。

「やった・・・・・・」

 だがヴァンプの顔は苦痛歪むどころか含み笑いすらしている。

「何・・・・?」
「いい刀だがこの程度では私は倒せんよ、我ら吸血一族は不死身なのだよ」
「不死身・・・・・・・そうか首・・・」

 大神は加山にもらったレポートの事を思い出した。

「でやあぁぁぁーー」

 首にめがけて横切り、しかし見切られていたのか素手で止められてしまった。

「なるほど・・・・ねらいどこはわかっているようだな」
「くっ・・・・・・」

 大神はそのまま見えない力により吹き飛ばされてしまった。
 ヴァンプはサーベルを拾い鞘に収めると振り返った。

「男、名を聞いてやろう」

 立ち上がった大神はまっすぐヴァンプをにらみつける。

「俺の名は大神一郎。この巴里を守るものだ!」
「大神一郎か。覚えておいてやろう」

 そういうとヴァンプは煙の中に消えていった。

「くそっ・・・・・・・」

くやしさを噛みしめる大神の横で花火達の声がした。

「グリシーヌ、大丈夫・・・・・・」
「そうだグリシーヌ」

 みるとグリシーヌの周りにみんなが集まっている。

「大丈夫かグリシーヌ?」

 しかしグリシーヌはうつむいたまま返事をしない。

「グリシーヌ!!」
「斧が・・・・・・」
「えっ!・・・・・」
「斧が・・・・・・」

 みるとグリシーヌ愛用の斧の取っ手の部分が砕けていた。

「私の斧が・・・・・・私の斧が・・・・・・」
「グリシーヌしっかりしてグリシーヌ!」
「・・・・・・・・・・・・・」
「グリシーヌ・・・・・・」

☆ ☆

 しばらくして・・・・・・・・
 シャノワール地下の作戦司令室。帰ってきた隊員たちはみな疲労と困惑でくらい顔をしている。いつも明るいエリカさえ元気がない。だが一番問題なのはあれから一言も喋ろうとしないグリシーヌだ。ヴァンプに全くはがたたず愛用の斧まで壊されたのがよほどショックだったのであろう。

「みんなご苦労だったね、後はこっちでやるから帰ってゆっくり休みな」
「はい、わかりましたグラン・マ」

 みんなが帰った後、残された大神は今回の戦闘の事を考えていた。

(あたらしい敵、しかも今まで戦ってきた怪人よりもはるかに強い。俺やグリシーヌが全く 相手にならなかった)
「グリシーヌ・・・・・・」
(何も言わず帰してしまったが、グリシーヌ大丈夫だろうか)
「ムッシュまだいたのかい」
「グラン・マ・・・・・・」
「大神さん顔色がよくありませんよ。帰って休まれたほうが」

 メルとシーも不安げな顔をしている。

「ありがとうメル君。でもまだ・・・・・・・」
「グリシーヌの事だね。あの強気のお嬢様があそこまでへこむなんて、よほど大切な斧だったんだね」
「それにあのヴァンプという怪人に手も足も出なかった事にもショックを受けてるみたいです」
「今回の敵もやっかいになりそうだね」
「ええ、それにやつは『我々吸血一族』と言っていました。前にあった怪人も含め敵は複数いるのではないかと思われます」

 場の空気がいっそう重くなった。

「まぁとりあえず今回は未知の敵相手によく戦ったさ。怪人は取り逃がしたけどダースも全滅させたことだしね、グリシーヌの事は花火がついているんだし、明日にでもなれば落ち着いて話も出来るだろう。今日のところはムッシュも帰りな」

 大神はしばらく考えて

「わかりました、あとはよろしくおねがいします」

 大神はアパートの戻るなりベッドになだれ込んだ。
 疲労はピークに達し精神面でもかなり衰弱していた。目をつぶるとすぐに睡魔が襲ってくる。

(奴等は一体・・・・・グリシーヌは大丈夫だろうか・・・・・・・)

 しばらくして、半分眠りかけた大神の耳にキネマトロンの着信音が聞こえた。

「・・・・・・・ん?」

 大神はキネマトロンを開いた。
 画面に花火の顔映し出された。

「・・・・・花火君」
「よかった大神さんまだ起きてらっしゃったんですね」
「花火君こんな間になにかようかい」
「あの・・・少しお話が・・・・・」

 花火の表情がどこか暗い。

「グリシーヌのことかい?」
「はい、帰ってきてからも自分の部屋に閉じこもってしまって・・・・」
「そうか・・・花火君。あの斧はそんなに大事な物だったのかい?」
「ええ、私も気になってタレブーさんに聞いてみたんですけど・・・・」
「どういうものなんだい?」
「なんでも幼少の頃から愛用してたもので思い入れが強いようなんです」
「そうか・・・・・・」

 大神は神刀滅却に目をやる。もしこれが壊れてしまったらそう考えるとグリシーヌの気持ちが分かる気がした

「斧は直せばいいんじゃないかな、探せば直してくれるとこがあるかもしれないし」
「はい、でもそんな事だけではダメなきがするんです」
「どういうことだい?」
「昔、話してくれた事がありました、この斧は自分の誇り自分そのものであると・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「グリシーヌは自分が貴族であり、ブルーメール家の人間であり、なによりこの巴里を守る巴里華撃団であることをとても誇りに思っています。でもその重圧だってあっんだと思うんです」

 大神は黙って聞いていた。

「私は怖いんです。その心のよりどころのしていた斧が折れる事でグリシーヌもおれてもう立ち直れなくなるのではないかと思うと、とても怖いんです」
「大丈夫だ花火君、もしグリシーヌが折れそうになったら君が支えてあげればいい」
「・・・・えっ私が」
「そうだ君だけじゃない俺だっている。巴里華撃団のみんなだっている。みんなで支えてやればいいんだ」
「大神さん・・・・・」

 こうして長い一日が終わった・・・・・・・・・・・そして次の日。
 大神達はシャノワールの楽屋にいた。

「みんな昨日はよく眠れたか?」
「うん、もうぐっすりだよ」
「私も今日の朝は気持ちよく踊れました」
「おまえは気持ちいいかもしれないが、毎朝寝起きにマラカス振られるこっちの身にもなってくれってんだ」

 楽屋に明るい笑い声が広がる、いつもと変わらぬ風景。
 一晩眠りみんな元気を取り戻したようだ、しかしその中にグリシーヌの姿はなかった。

「花火君、グリシーヌは?」

 他の隊員も花火もそれに反応した。

「ええ、朝になっても部屋から出てこなくて、ろくに食事もとってないみたいで」
「そうか・・・・・・」
「グリシーヌさん大丈夫でしょうか?」
「まったくあの程度でしょげちまうなんてだらしね〜な」
「そんなこというなんてヒドイよ、ロベリア。ねぇイチロー、グリシーヌのお見舞いにいこうよ」

 みんなグリシーヌの事を気にかけているようだ。

「わかった。みんなでグリシーヌの家に行ってみよう」

☆ ☆

 しばらくして・・・・・・ここはブルーメール家の大広間、大神達がタレブーと口論していた。

「タレブーさん。どうしてグリシーヌに会わしてくれないんですか!?」
「お嬢様は誰にも会いたくないと言っているざます。たとえ大神の頼みでもあわせるわけにはいかないざます」
「そんな・・・・・・・」
「お嬢様は私にも話してはくれないざます。こんなことは初めてざます」

 タレブーの目にうっすらと涙が浮かぶ。

「そうですか・・・・わかりました・・」
「大神さん・・・・・」
「みんなしかたない今日のところはあきらめて帰ろう」

 門の所まできて花火が大神を呼びとめた。

「大神さん・・・・・・・・・」
「だいじょうぶだよ花火君、グリシーヌだってそのうち話してくれるさ」
「そうだよ、花火元気出してよ」
「また明日も来ますね」
「まったくしょうがねえな〜」
「みなさんありがとうございます、私もがんばってみます」

☆ ☆

 次の日・・・・・・・
 花火から連絡を受けた大神は公園に向かった

「・・・・・・・あれは?」

 よくみるとグリシーヌが一人公園を歩いていた、だがやはり表情は暗い。

(花火君がんばったみたいだな)

 大神はそっとグリシーヌに近づき意を決っして声をかけた

「グリシーヌ・・・・・・・・」
「たっ隊長!!」

 驚いたグリシーヌは逃げるようなそぶりをみせる

「まってくれグリシーヌ!!」

 大神がグリシーヌの手を取る

「はなしてくれ、隊長!!」
「いいや離さない。君がちゃんと話してくれるまでは絶対はなさないぞ!」
「隊長・・・・・・・」

 グリシーヌの手から力がぬけた。

「どうしたっていうんだグリシーヌ。みんな心配してるぞ」
「隊長、私は・・・私はどうしたらいい?・・・・・」
「えっ?・・・・」
「私は幼き頃から誇りのために生きてきた。あの斧とともに、どんなつらい事があって
もあの斧とともに乗り越えてきたのだ!」

 グリシーヌの目が涙でにじむ。

「だが私の斧は折れてしまった、誇りも信念もみんな一緒にな・・・・・」
「グリシーヌ・・・・・・・」
「隊長・・私はどうすればいい・・・誇りを失った私には何も考える事ができない。教えてくれ、隊長。私はどうすればいい!?」

 今大神の前にいるのはいつもの気の強いグリシーヌではない。まるで道に迷った少女
のようだ。

「グリシーヌ!!」

 大神がグリシーヌを強く抱きしめる。

「たい・・・ちょう・・」
「しっかりするんだグリシーヌ、君はそんなに弱い女性じゃないはずだ!」
「だが、誇りを失った私はもう・・・・・」
「いいや君は何も失っちゃいない・たとえ大事な斧が壊れたとしても、誇りや信念は壊れててはいない。君の心の中で今でも生き続けている」
「私の心の中に・・・・・・・」
「そうだ、君は何も失っちゃいない。君が自分を信じてさえいれば、誇りは永遠に失われないんだ!!」
「隊長・・・・・・」

 抱き合う二人そのすみで、たたずむ影があった。花火だ。

(ああ大神さん。自分でお願いしていながらグリシーヌをうらやましく感じてしまう私
がいるんです、ああ大神さん・・・・・・)

 その時、携帯キネマトロンの着信音がなった。どうやらまた事件が起こったらしい。

「グリシーヌ・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 返事は返ってこない。

「グリシーヌ先に行ってるぞ!」

 そう言い残すと大神はシャノワールへ走った。言うまでもなく影で聞いていた花火もすぐに向かった。

「グラン・マ!」
「来たねムッシュあといないのは・・・・・」
「すみません、遅れました・・・・・」

 花火がとびこんできた。

「あといないのはグリシーヌだけだけど、しかたないね。メルはじめな」
「ウィ、オーナー。シャンゼリゼ通りにダースが現れました」
「怪人の姿はまだ確認されていませぇん」
「どうするんだいムッシュ、いくのかい?」
「はい、ダース達を一刻も早く倒さなくては」
「大神さん。グリシーヌさんは・・・・・・・?」
「イチロー・・・・・・・・・」

 エリカとコクリコが心配そうな目でこっちを見る。

「グリシーヌは必ずきてくれる。今は信じて出撃しよう!」

 大神の言葉には自信が感じられた。

「わかりました、いきましょう大神さん」
「うん、きっと来てくれるよねみんな仲間だもん」
「やれやれ、まったく世話のかかる。まっ、いざとなったらあたしが二人分働いてやるよ。その分はきっちりもらうからな」
「大神さん、グリシーヌは必ず来ます。私はそう信じてます」
「よし、いくぞみんな。巴里華撃団出撃!!」

☆ ☆

「巴里華撃団参上!!」

 シャンゼリゼ通りに5体の光武が現れる。

(どうやら本当にダースだけみたいだなこれなら・・・・・)
「みんなこのまえと同じように散開して戦うぞ、敵の動きをよくみて戦うんだ!」
「了解!!」

 大神の指示でみんなが動こうとしたその時だった。後方で青い爆炎と同時にグリシーヌ機が現れた。

「グリシーヌ!!」
「グリシーヌさん!!」
「まってたんだよ、ボクたち・・・・」
「ったくやっとご登場かよ・・・」
「グリシーヌ信じてたわ・・・・」

 口々に歓声があがった。

「みんなすまぬ・・・だがもうだうじょうぶだ私も戦う!」
「よし、みんなそろって出撃だ!!」
「了解!!」

 グリシーヌの登場で一気に士気のあがった巴里華撃団は次々とダースを倒していく。

「マジーク・プティ・シャ!」
「デモン・ファルチェ!」
「北大路花火二の舞・・・落花堤鳥!」
「天罰です!」
(みんないい調子だ。グリシーヌが戻ってきてくれて、本当に嬉しいんだな)
「隊長・・・・・」
「なんだいグリシーヌ・・・・・?」
「私はまた貴公に教わった。何が起ころうと自分を見失わず前に進む事が本当の強さだということを」
「グリシーヌ・・・」
「私もいつか貴公のように揺るぎない心を手に入れてみせるぞ」
「ああ君ならきっとできるさ、いくぞグリシーヌ!」
「了解!!」

 二つの光が重なり眩いばかりの輝きを放つ。

「斧よ我が誇りを聞け・・・・・・・!!
剣よ我が魂にこたえよ・・・・・・!!
二人の前に道は開ける・・・・・!!
轟け・・・・・・ブルー・ラド・マレ!!! 」

☆ ☆

「じゃあゆくぞ・・・・・・・・」
「勝利のポーズ・・・・・・・決め!!!!!!」

「そういえば、ここ最近グリシーヌさんみませんね」

 ここはシャノワールの楽屋。大神達が雑談をしている。

「なんだ、ま〜たひきこもっちまったのか?」
「えっ、ほんとなのイチロー?」
「さあ。そんな事はないと思うけど、花火君なにか知ってるかい?」
「あっそれはですね・・・・・・・・・」

 その時、ちょうどのタイミングでグリシーヌが入ってきた。

「あっグリシーヌさん、いままでどこにいったんですか?」
「そうだよ、ちょっと心配してたんだよ」
「すまぬ、実はこれを直しにな・・・・・・」

 そういうと後ろから見慣れたものがでてきた。

「あっ、斧直ったんですか」
「グリシーヌったら一流の職人を捜すのに巴里中を捜しまわったんですよ。それから毎日頼みに通ったりして・・・・・・・」
「そうだったのか・・・・・・・・」
「まっ、斧振り回すしか能がなさそうだもんな」
「なんだと貴様、私を愚弄するきか容赦せぬぞ!」
「おっ、久しぶりにやるか?」
「もう、直ったらすぐこれなんだから」
「ははははははっ・・・・・・・・・・・・・・・」

次回予告

ねえねえしってるメル次回はあたし達が主役なんだよ
本当っそんなあたしが主役なんて・・・・・・・・
何いってるの本当はやりたかったくせにぃ〜
そんなことないわよっほら予告っ予告

次回サクラ大戦 血塗られた戦い

「親友の条件」

ぜったい観てねヒューヒュー
あ〜どうしよう・・・・・・・・・




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