サクラ大戦 血塗られた戦い(第1話) 作・ボケorツッコミ |
第1話 「つかの間の平和と迫り来る戦慄」
時はあの長安事件から一ヶ月、多くの戦いをとおし花組をまとめあげ自らも大きく成長した大神一郎は巴里で平和な日々をおくっていた。
「平和だな〜」
いつものカフェで大神はかるい昼食をすませていた、戦いのあと米田と加山の助言で帝劇をはなれ巴里にやって来た大神であったが夜こそシャノワールでモギリの仕事があるが昼間は特にやることがなくぼ〜っとしているが毎日あった。もし帝劇にいたなら書類整理等の雑用で暇など言ってられないのだがこっちではメルが全ての仕事をこなしてくれているのでその必要もない完全な平和ぼけである。
「なんかこう平和だと戦ってた頃が嘘みたいだ」
こんな調子だ、しかしそんなひとときの静寂もあっさり壊されたのである。
「大神さ〜ん」
「んっ?」
見上げると赤い修道服を身にまとい、まるで天使の如し笑顔をした女性がいた。エリカである。
「こんなとこにいたんですか大神さん。さあいきますよ」
エリカが大神の手を引っ張っていく。
「へ?」
大神にはなにがなんだかわからない。
「エッエリカ君。ちょっとどこにつれてくんだよ?」
「いいからついてきてください」
なすがままに引っ張られていく大神。
(でもこんな無理な歩き方をしたらエリカ君また転んでしまうんじゃないだろうか?)
もしそうなったら手を引かれている自分もただではすまないそんな想像が脳裏に浮かび大神は少し身構えた。
しかしそんな気配を全くみせず教会についてしまった
「・・・・・・・・・・・・・・」
(そういえば帝劇に来たときも一回しか頭ぶつけたのみてないな)
エリカも成長してるんだなと感傷にひたる大神だがそれはあまかった。
「エリカさんどこいってたんですか?」
教会の中から少し困った顔をして神父様がでてきた。
「エリカさんには庭な掃除を頼んだはずでしたが」
「え?」
大神の背中に寒気がよぎる。
「はい!大神さんと一緒にやろうと思っていままでさがしてたんです」
「エリカくん〜〜〜〜〜」
なんとか逃れようと神父に目をやる大神だったがそれは逆効果だった。
「大神さんが一緒なら心配いりませんね、それではたのみましたよ」
そう言い残すと神父様は教会の中に戻っていってしまった。
「そっそんな〜」
がっくりとする大神をしりめに
「さあ〜がんばりましょう大神さん」
エリカはご機嫌だ。
「やれやれ・・」
大神は仕方なく花壇の掃除をしはじめた。
(これなら帝劇の雑用とおなじもんだよな)
太陽の陽射しが一番強い昼に花壇で掃除とは思いの他重労働であるしかしエリカは
「みてみて大神さんきれいな花ですよ」
「ああそうだね」
「いつもなにげなくみてますけどよくみるとけっこう綺麗な花が咲いてるんです
ね〜」
エリカが無邪気に笑っている。
「やれやれ・・・・・・」
大神からためいきがでる。
(長保をたおしエリカくんと一緒になるために帝都をはなれシャノワールにもどってきて・・・・・あいかわらずメル君とシーくんはかわいくてそれからエリカ君と教会で・・・・・・・)
大神の顔自然に緩む。
「どうしたんですか大神さん妙にニヤニヤして」
「いや・・・」
ふつうならここで「なんでもないよ」と笑ってごまかすとこだが大神とエリカの間ではもうそんな事をする必要はない。
「こっちにきてすぐのことをおもいだしてたんだよ」
そういってエリカを見つめる。
エリカにも意味がわかったらしく顔を赤らめる。
「もう大神さんったらはずしいじゃないですか」
照れるエリカだがその目は大神をみつめたままだ。
「エリカ君」
「大神さん」
ちかづいて行く二人・・・・・・・・だが、
「きゃっ」
エリカが小石につまずいた、ぽ〜としてた大神は間に合わなかったエリカが花壇の真ん中で、はでにひっくりかえる。
「大丈夫かいエリカ君」
大神があわててちかよる。
「ふぇ〜服が泥だらけです〜」
「そういえばまた赤い服にしたんだね?」
こっちに戻ってきた当時は正式なシスターとしてもらった黒い修道服を巴里中の人に見せて歩いたものだった。
「やっぱりこっちのほうがにあうかなって・・・神父様にもお許しをもらって・・・・・・・・・」
そこまでいうとエリカはまた大神をみつめなおす。
「前の服の方が良かったですか?」
「いやそっちのほうがにあうよ」
そういうとちょっと不安げな顔をしていたエリカにぱっと明るさが戻る。
「ありがとうございますエリカだいかんげあっ・・いえうれしいです大神さんにそういってもらえて」
そういって大神の胸に顔を埋める。花壇の真ん中で抱き合う二人・・・・・・とそこへ
「どうかしたんですか?」
見るとそこには神父が立っていた、転んだ時のエリカの声を聞いて様子をみにきたのだ。あわてて離れる二人しかし神父の目は二人の足元をに向けられていた。
「エリカさんには花壇の掃除を頼んだはずでしたが?」
「えっ」
辺りをみまわすとさっきまでのドタバタで花壇の花がみるも無残な姿になっていた。
「きゃ〜ごめんなさい〜」
慌てて謝るエリカ。
「大神さんもついてたというのに」
「すみません」
大神もふかぶかと頭を下げる。
「でもまだ大丈夫ですエリカさん水をくんできて下さい」
「はいっ」
エリカは大急ぎてかけていった。
「ほんとにすみませんでした神父様」
「いえいいんですよ」
「えっ」
神父の意外な返事に思わず聞き返す。
「いえ昔に比べるとエリカさんもだいぶ失敗もなくなってきて、きっとこれもひとえに大神さんと神様のおかげですね」
「いえそんな」
「お水もって来ました〜」
エリカがあたふたとこちらに走って来る。
「いろいろありましたがエリカさんのことは長い目で見守ることにしたんです」
「神父様・・・」
(その時の神父様の目はやさしさに満ちていたそうそれはまるで聖母マリアのように・・・・)
☆ ☆
☆
その夜・・・・
大神はいつもどうりシャノワールでモギリをしていた。
「ふぅ〜ひとだんらくついたな」
疲れて一休みしていると
「イチロ〜〜〜」
見るとステージ衣装を着たコクリコが走ってきた
「イチロー、モギリの仕事終わったの?」
「ああ、それで休憩してるとこだよ」
「それじゃーさー、それじゃーさー、ボクのマジックショー観にきてよ、今日新しいやつやるんだ」
「あたらしいやつ?」
「うん、みんなに手伝ってもらうんだ」
「へぇ〜おもしろそうだなぜひ観にいかせてもらうよ」
「うん、ぜったいだよイチロー」
そう言うとまた走っていった。
(コクリコのレビューにはまだ時間があるな売店でシー君の手伝いでもするか)
大神は立ち上がると売店の方に向かった。
「んっ!」
大神は足を止めた見るとグラン・マと警部がなにやら難しい顔をして話している、するとグラン・マがこっちに気づいたらしくこっちに歩いてくる。
「おや、ムッシュちょうどよかったよ、ちょっとつきあってもらうよ」
いつもより真剣なグラン・マの表情に大神の気が引き締まる。
「わかりました・・・・・」
グラン・マは部屋につくと一枚の新聞の切れはじをさしだした。
「これは?」
「いいから読んでみな」
(なになに「謎の怪奇事件続発!!警察もお手上げか?」なんだって!」
「グラン・マこれは・・・・・・」
「まだ詳しい事はわからないんだけどね〜。エビアン警部にも聞いてみたんだけど、どうもやな予感がしてね」
そこには近頃怪奇事件が続発してる事、しかも被害者はみんな若い女性で首筋にかまれたような後があり全員出血多量で亡くなってるという事が書いてあった。
「まさかまた怪人が現れたんでしょうか?」
新聞の切れはじを握り締める大神その目には少なからず戦慄を感じている様子だ。
「さっきも言ったとおりまだなにもわかっちゃいないんだ、でもここには年頃の娘が多いからねあたしも気を付けないと夜もおちおち眠れないよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
大神はなにも言わなかった
「まあなんにせよ夜の見回りをかねてあの娘らを送ってってほしいんだ、特にコクリ コは一番小さいんだからしっかり頼むよいいかいムッシュ?」
「わかりました自分が責任もって警護にあたります」
「ムッシュそんなに肩に力を入れなくてもいいんだよ、夜のデートだと思ってたのしんできな」
「はあ〜??」
真剣な話の後に微妙に冗談を言うところがなんともグラン・マらしい。
「そういえばナポレオンの姿がみえませんね」
ナポレオンはいつもグラン・マと一緒にいる猫である。
「ナポレオンステージにいけばあえるさ」
「ステージ・・・・・・・いけないコクリコのレビューがはじっまってしまう」
大神は急いで観客席に向かった。
「ふぅ〜間に合った」
ステージの上ではメルとシーが司会をしている。
「みなさまおまたせしましたぁ〜」
「次はマジカルエンジェルコクリコのマジックショーです」
ステージ衣装のコクリコがさっそうと現れる。
「さあさあマジカルエンジェルコクリコのマジックショーだよ〜今日のマジックは驚異アニマル変身マジック!!」
そういって手をあげると後ろから人一人は充分はいれるくらいの箱とねこ耳衣装のエリカがでてきた。
「さあここにいるねこ耳姿の女性を箱の中に入れ、アン・ドゥ・トロアで・・・・・」
ボンッと箱の中から煙がたち箱が四つに分解されたそして・・・・・・
「にゃ〜〜ご」
箱の中にいたのはなんとナポレオンだった、この光景に観客から拍手喝采がおこった無論大神も席を立って拍手をしていた。
「はい、見事ねこの姿に変わりました」
ナポレオンをかかいあげコクリコが手を振っている。
(すごいマジックだないったいエリカ君はどこにいったんだろう?)
こうして今夜もシャノワールは大反響で終わった。
数時間して・・・・・・・
「みんなお疲れ様」
楽屋に大神と巴里華撃団の面々が集まっている。
「大神さんお疲れ様です・・・・・・・・・・ぽっ」
「イチローご苦労様なんかボク疲れちゃったよ」
「私はこのくらいどうということもないぞ」
「はいはい隊長こんなやつほっておいて一緒に一杯飲んでいこうぜ」
ロベリアが大神の肩に手をくもうとする。
「あ〜ロベリア、イチローをひとりじめにしちゃダメだよ〜」
「そうですよ大神さんは私のために巴里に来たんですからね」
「ロベリア、貴様その手をどけろ」
グリシーヌが愛用の斧を構える。
「なんだいやるっていうのかい?」
ロベリアの目がギラリと光る。
「グリシーヌ落ち着いて」
「そうですよロベリアさんけんかはよくありませんよ」
二人がけんかを止めようとしている。
「イチロー二人のけんかを止めてよ〜」
コクリコが大神の袖を引っ張る。
「二人ともけんかはよせもう遅いんだしそろそろ帰るんだ」
大神の声に二人はやっと動きを止める。
「ちっ」
「くっ」
「やれやれ・・・・・」
今回はなんとか回避したようだ
「それじゃイチロー帰るね」
コクリコ達が帰ろうとする
「あっまってくれ」
大神は慌てて玄関まで追いかける。
「近頃妙な事件がつづいてるので見回りをかねてみんなを送る事にしたんだ夜道は危険だからね」
「えっイチロー送ってくれるの?」
「大神さんとご一緒できるなんて・・・・・・・・・・・・・・ぽ」
「そりゃ〜女一人じゃ夜道は危険だろうね〜」
「ふん貴様の方がよっぽど危険だと思うけどな」
「なんだと」
二人の間にまた火花が散る。
「まあまあ二人とも落ち着いて」
二人をなだめる大神もはや疲れきっている。
「そうだよボクなんだか眠くなってきたよ」
「コクリコ疲れちゃったんだね大神さんそろそろいきましょう」
「ああそうだねだいぶ遅くなっちゃったしね」
二人もしかたなく同意したようだ。
「じゃあ・・・・・・・・」
「いきましょうか大神さん」
「いこうよイチロー」
「ゆくぞ隊長」
「参りましょう大神さん」
「いこうぜ隊長」
5人がいっせいに応えた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
思わず絶句する大神。
「イチローはボクといくんだよ」
「ガキは引っ込んでろ隊長もちろんあたしといくんだろ?」
「なにをいうかロベリア隊長はわたしといくのだ」
「大神さん私といってはくれないのですか?」
「大神さんはエリカと一緒にいくんです、大神さんは私のために巴里にきたんですからね」
「エリカ・・・・エリカはシャノワールに住んでいるんだから送る必要ないと思うけど」
大混乱である、もはや大神には収集がつかない。
「そうだ大神さんに選んでもらいましょうよ」
その声に全員の視線が大神に集中する。
(どっどうしよう・・・・・・・・)
「大神さん!」
「イチロー!」
「隊長!!」
「大神さん」
「たいちょうさ〜んわかってるわよね〜」
しばらくして・・・・・・・・
大神が夜道を歩いているとなりにはコクリコが一緒だ。あの後追いつめられた大神はグラン・マの言葉を思い出しコクリコと行く事にしたのだ、今思えばグラン・マはこうなることを予知して気を利かせたのかもしれない。
「えへへへへ・・・・・」
コクリコはどんな理由だろうと大神が自分を選んでくれた事がうれしいみたいだ。
「ねえイチロー」
「んっ」
「どうしてボクを選んだのやっぱり一番小さいから?」
コクリコが少し不安げな顔をして聞いてくる。
「いや、コクリコを守りたいと思ったからだよ」
「ほんとに、エリカと一緒にグリシーヌのお家に行ったほうがよかったんじゃないの?」
大神がコクリコを選んだ後ロベリアはつまらなそうに勝手にどこかへ行ってしまったが、グリシーヌと花火はなぜかエリカが送る事になった。
「もしエリカくん達と一緒に行ったらコクリコが一人になってしまうよ、俺にはそんな事は出来ないな」
そこまで言うとコクリコが抱きついてきた。
「イチロ〜」
声に少し泣き声が混ざっていた。
しばらくあるいて公園にさしかかった時だった。
「ねぇイチローそういえばなにがそんなの危ないの?」
大神は少し真剣な顔をしてはなし始めた
「ああ、詳しい事はまだ分ってないのだが近頃女性を狙った怪事件が多数おきているんだ」
「かい・・・じけん?」
少し張り詰めた空気が流れたその時だった。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
まさに絹を引き裂くような女の悲鳴だった。
「コクリコここで待っているんだ!」
そう言い残して大神は声のしたほうに走った・・・・・しかし
「イチロ〜〜〜」
コクリコが追いかけてきたのだ。
「コクリコ待ってるんだ」
「いやだボクも行く、ボクだってイチローを守りたいんだ!」
「・・・・・・・・・・・・・」
しばらく考えて大神は口を開いた。
「よし、いこうコクリコ」
「うんっ」
走る大神とコクリコするとまた悲鳴が聞こえた。
「近いぞその角を曲がったあたりだ」
大神とコクリコは角を曲がった、そこで見たのはあまりに悲惨な光景・・・・・
漆黒のマントに身を包んだ2mはあろうかという男がどこかのダンスバーの帰りだろうドレスを着た女性の首筋に噛み付いていた。
「イチロ〜ボク恐い」
コクリコは震えている、大神でさえその男から発せられる妖気にも似た殺気に動けないでいる。
やがて男が女性から手を放すと、まるで糸を切られた操り人形のように崩れ落ちる。
我に返った大神は意を決して男に叫びかける。
「おい貴様その人になにをした?」
その男はこっち気づくとにやりと笑いこっちに向かって走ってきた。
「くっ」
身構える大神。しかしその男は大神を軽々飛び越え走っていってしまった。
「追いかけるぞコクリコ!」
「うんっ」
追いかける二人しかしその男は恐ろしく速く後ろを追いかけるのが精一杯だ・・・・
とそこに騒ぎを聞きつけたロベリアが現れた。
「ロベリアそいつを止めてくれ!」
「隊長・・・・よし!」
ロベリアの手から炎が放たれるしかし男はすばやくそれをかわしあっという間にロベリアをぬいていったこれから考えてもすでに人間に身体能力をはるかにこえている。
「くそっ」
ロベリアが振り向いた時には男は走り去った後だった。
「おうぞロベリア!」
「おうっ!」
追う3人、男がテアトル広場にさしかかった時やはり騒ぎを聞いたのだろう向こう側から残りの3人が現れる。
「みんな〜そいつを捕まえてくれ〜」
叫ぶ大神。
「まかせてくださいエリカ撃ちます」
マシンガンの連射音が夜の巴里に響く、さすがに銃には勝てないのか男は方向を変えて路地裏に逃げていくしかしその奥は行き止まりであると大神は知っている。
「とうとう追いつめたぞ!!」
大神は念の為に持ってきといた日本刀をスラリと抜く、そうあの米田一基の愛刀であり二剣二刀のひとつでもある帝劇を出る時に託されたあの名刀「神刀滅却」である。
「やぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」
大神が持ち前の瞬発力でいっきに間をつめる、男は動こうとしない。
「もらったあぁぁぁぁ〜〜〜」
大神は力いっぱい剣を振り下ろす・・・・だがその刃はあろうことか空を切った。
「なにっ!」
男は大神が剣を振り下ろす瞬間に飛び上がって避けたのだ、いや飛び上がったというよりは浮き上がったというのが正しいのかもしれない。そのくらいゆっくりと重力を無視するかのように飛び上がったのだその高さかるく3〜4mはいったであろう。
「馬鹿な・・・・・」
巴里華撃団の5人も動揺が隠し切れない様だ。男はそのまま怪しい笑みを浮かべ夜の闇の中に消えていった。
「一体なんなんだ・・・・・いったい・・・・・・・・」
「大神さん・・・・・・・」
みんな不安に満ちた顔つきをしていた、大神も込み上げてくるような戦慄を感じずにはいられなかった。
(なにかが、なにかがはじまろうとしている)
見上げた空はいつもよりずっと黒く深くみえた・・・・・・・・
私の名はグリシーヌ・ブルーメール。 次回サクラ大戦 血塗られた戦い 「戦士の誇りそして決断」 愛の御旗を胸に・・・ 隊長わたしはどうすればいい・・・・・? |