万延元年 冬
江戸城 桜田門外
雪の降る中を行列が城に向って進んでいる。
中央には大層な駕籠がある。
その様子を陰からじっと見る人影があった。
「・・・・・」
水戸脱藩浪士 大神一彦
刀に手をかけ、仲間に指示を出す。
「行くぞ!!」
大神の合図と共に一斉に四方から斬りかかってくる。
行列の武士たちも応戦するが不意打ちの上、刀に袋をかけていたために成す術も無く斬られていく。
「大老!!覚悟ぉっ!!」
大神は駕籠の中へ刀を突き刺した。
手応えを感じると早々に引き上げていった。
駕籠の中にいたのは大老・井伊直弼。
後に「桜田門外の変」とよばれる事件がこれである。
襲ったのは、薩摩藩士一人を含む水戸倒幕派浪士たち。20名にも満たぬ浪士たちが幕府の重役を殺害するなど、数年前までは考えられなかったことだった。
そして、文久三年、長州。
井伊大老暗殺の下手人、大神一彦は諸国を遍歴。今はこの長州にいた。
この日、大神の姿は萩城近くの訓練場にあった。
既に大勢の男たちが集まっている。彼らはここで入隊試験を受けるのだ。
長州藩士、高杉晋作が考案した全く新しい部隊。
問うは実力と志のみ。武士に限らず、農民や商人でも入隊できる部隊。
その名は 『奇兵隊』
「次の者。」
順番が大神に回ってきた。
試験の課題は用意された太目の丸太を斬ること。
もちろん全部斬れる者などそうはいない。3分の1程度斬れれば上等というもの。
大神は間合いを詰め、ゆっくりと二刀を抜いた。
「・・・・・」
目を閉じ、気を集中させる。
そしてカッと目を開き・・・
「狼虎滅却・・・」
ザンッ!!
丸太はまず真っ二つになった。そしてさらに・・・・
「天地一矢!!」
十文字斬りが炸裂。丸太は4つに分かれてしまった。
その場にいた誰もが言葉を失った。
「・・・・おい、俺は不合格か?」
大神の問いに、受付の武士は・・・・・
「と、とんでもない。合格だ。」
「ふん。」
刀を納め、兵舎へと歩いて行った。