あずまんがサクラ4   作・米田鷹雄

1.うれしい

 帝劇食堂。
 副司令・藤枝かえでは、靴を手ににやついていた。

「どうしたんでぇ。ニヤニヤしてよぉ」
「ほら、見てください」

 かえでは、その真新しい赤い靴を米田に示す。

「花組のみんながね、誕生日のプレゼントくれたのよー」
「てめぇ! なにかぁっ!? 青春連続キネマトロン活劇の先生にでもなったつもりか!!」
「な、なに怒ってるんですか??」


2.別に

 帝劇地下司令室。
 かえでは別用で不在だが、花組メンバーを前に米田がスクリーンに向かってなにか説明している。
 と、そのままで突然、全く違うことを喋り始めた。

「あ、そうでぇ。副司令のかえでは、みんなからプレゼントをもらったそうだな」

 くるっと振り返り、全員を見つめる。
 そして、また元の体勢に返り何事もなかったかのように仕事を続けていった。


3.誕生日

 おずおずとレニが口を開く。

「米田司令の誕生日っていつ?」

 なおもしばらくそのままだった米田は、しばらくしてからボソッとつぶやいた。

「もう過ぎてるよ」

 米田はもっていたステッキを力一杯、床に叩きつけた。


4.私が

 大きな荷物を抱えて、駅の階段を昇りにくそうにしている男を見かけたカンナは、それおを助けようと近づいていった。

「あのー、荷物手伝おうかい?」

 しかし、振り返った、その男は……

(しまった!! 外人じゃん!)

 それでもカンナは、なんとか意思の疎通を試みる。

「えーと、ほら、助けます。あたいが、それを」
「?」
「えーと。わっかんねぇかなぁ」

 カンナは脳をフル回転させて、それらしき英単語をひねり出そうとした。

「ヘルプ……ヘルプ」

 そう、これに“私が”を足せば!

「ヘルプミー!!」


5.国際都市

 それでも、身振り手振りをまじえてなんとか意図は伝わり、荷物をもってあげることができた。
 なにか、感謝の言葉を述べていたようだが、よくわからず、サムズアップ(親指をあげて)の「イエーイ」でごまかしてきた。

「ふー、まいったまいった」
「見たわよ」

 そう声をかけてきたのはマリアであった。

「ふふふ。親切なのね、カンナ」
「なんでぇ、みてたのかよ」

 照れくさそうに頭をかく。

「なんか全然言葉が出てこなくて。あーゆー場合はどう言うのは正解だったのかな」
「そうね」

 マリアは周囲に視線を走らせる。

「丁度、あそこで欧米人が困ってるわね。手本を見せるから見てて」
「おおっ! さすがはマリア!」


6.ヒット&アウェイ

 マリアはその欧米人に近づき話かけた。
 両手に大きな荷物を抱えている彼は最初は怪訝な表情を浮かべていたが、マリアが話すにつれ──やっぱり怪訝なままだった。

「あれ!?」

 突如、脱兎のごとく駆け出したマリアは、外人を置き去りにしてカンナの方に──いや、カンナの目の前も通り過ぎていく。

「だめだわ! ドイツ人よ!!」
「ええーーっ。逃げちゃっていいのかよ!?」

〜Das Ende〜





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