最終話「太正燃ゆ」(その3)

「また曲がり角ですね」

 もう何度目であろうか。
 地磁気も狂っているこの中では、もうどの方位に進んでいるかさえわからない。
 それでもすすむしかないのだからと、さくらが機体を進めた。

「!!」

 曲がった先は、急に視界が開けていた。そして、そこには、多数の敵兵が待ち構えていたのである。

「きゃぁぁぁ!!」

 さくらが悲鳴をあげる。一斉の集中射撃を浴びたのだ。

「さくらくん!」

 この事を予想していた大神の反応は素早かった。
 霊気防御で翔武を守ると、マリアに翔武の腕を掴ませ、無理矢理引きずり戻したのである。

「すいません、大神さん。油断しました」
「いや、いいさ。それよりも損傷は?」
「特にありません。大神さんのおかげです」

 狭いところから急に開ける地形での待ち伏せ戦術だ。小兵力ずつしか出てこれないところに、多数が一斉攻撃できるというのが、その特徴である。どんなに強力な相手であろうと、各個撃破できるのだから、有効な戦術だ。

「隊長。どうします?」

 それがわかっているマリアも思案顔だ。
 だが、大神は対処法をも組み立てていた――もっとも、本来は海軍軍人である大神が、陸軍軍人であった雪組隊長・マイヤーに相談をもちかけ、授かったものではあったが。
 そして、手早くそれを花組各隊員に指示すると、間髪をおかずに実行にうつす。

「さくらくん!」
「はい!」

 さくらの翔武が飛び出す。
 また、激しい迎撃を受けるが、大神が霊気防御を実行し、これを防ぐ。さらに、アイリスが直接、敵隊列へと瞬間移動する。知識として攻撃力が低いことはわかっていても、ほとんどの兵は花組と対戦するのははじめてだ。目の前にあらわれれば、つい気をとられてしまう。その隙を、歴戦の花組は見逃さない。

「破邪剣征・千花乱撃!!」

 さくらの必殺技は、前方直線上の特定幅の敵を全て掃討できる。
 だからこそ、大神は、さくらを先頭にすえたのだ。

「よし!」

 敵陣に穴ができた。
 花組は一斉に突撃を開始する。
 なかでも大神は、唯一、真武のみに残された高機動装置を使い、敵陣のまっただ中へと切り込んでいく。

「うぉぉぉぉぉ!」

 待ち伏せを簡単に破られてしまったことで、動揺したのであろう。
 扶桑の兵は、まるで蜘蛛の子を散らすように逃げ出しはじめた。

「隊長。追撃しましょう!」

 しかし、マリアの進言に、大神は首をふった。

「やめておこう。一旦、隊列を組み直すんだ」

 だが、マリアも食い下がる。

「なぜですか。逃げたとはいえ、この奥に入っていたにすぎません。そうなれば、態勢を立て直し、再び対峙することになるでしょう。兵力はできるだけ減少させておいたほうがよいのではないのですか?」
「いや。おそらく敵は、それなりに迎撃態勢を整えている筈だ。ならば、そこに壊乱した兵が逃げてくれば、少なからず混乱するだろう。そして、逃げ出せば攻撃しないとしれば、敵兵の士気が挫きやすくなると思うんだ」

 二人の意見はどちらも、同じくらいおこりうる事態だ。
 だが、大神は、そう読んだ。かつて、米田一基は、戦場のにおいのわかる男として名声をはせたが、その最後の教え子も、同じ道を歩もうとしているのである。
 マリアも、大神がそこまで考えてのことならばと納得した。

「いくぞ、みんな。前進だ!」

 開けた地形に出たことで、隊形は組みやすくなった。
 前衛はさくらを中心に、左翼にカンナ、右翼にすみれを配する。そして中央には大神とアイリス。後衛前列にはマリア、後列には紅蘭といった布陣だ。本来なら、後方からの攻撃に備えて最後衛に防御力の高い機体をおきたいところだが、無い袖はふれない。
 それでも、前方向の敵と戦っているうちは、協力な陣形だ。
 花組は敵の抵抗拠点を次々と突破し、奥へ奥へと進んでいく。

「さくらさん。そちらにいきましたわよ!」
「わかってます!」

 すみれの攻撃を避けようとした敵がさくらの前に飛び出てきた。

「えい!」

 とどめを刺され、敵兵が倒れる。

「紅蘭、右翼をお願い。私は左翼を狙うわ!」
「了解や!」

 後方からは雷武と烈武による支援射撃が効果的に行われている。八八粍砲による『大威力』『面』制圧と、回転式多銃身機関砲による『多弾数』『線』制圧が相乗効果を発揮しているのだ。

「よし、あたいに任せな!」

 分断された敵にカンナが切り込み、倒す。
 時折、損傷している左側の敵をしとめそこなうこともあるが、そこは、他の隊員がうまく補う。

「痛いんだぞぉ〜」

 今回はアイリスだった。
 見事なまでの花組の連携だ。

 一人はみんなのために。みんなは一人のために。

 大デュマの『三銃士』に登場する有名な台詞であるが、今の花組ほどこの言葉を体現しているものはあるまい。

「ふぅ。どうやら敵を掃討できたな」

 大神は、そう判断し、前進を再開する。
 だが、しばらくいくと、歩を止めざるをえなかった。

「行き止まり!?」

 穴が終わっている。

「道を間違えたんじゃねーのか?」
「いや、そんな筈はないわ。第一、敵はこちらに後退してきたのに、一兵もいないなんて……」

 隠し扉でもあるのではないかと、捜索をはじめる。
 こうなると、能力を発揮するのは、やはり紅蘭だ。

「大神はん。ちょっと、これ見てや」

 紅蘭は床を示した。

「ほら。ここんとこで、微妙に色が違うやろ。良く見えると、これが四角く続いてるんや」

 外部受像機を接写に切り替えて観察すると、確かにその通りだ。

「ということは、ここいらに……あった!」

 見つけ出したのは、押釦の二つついた簡単な操作番である。
 そして、紅蘭は、『降』と書かれた釦を押した。
 次の瞬間、低い蒸気音がして、床が下がりはじめたではないか。

「みんな! これに乗るんや!」

 他の場所にいた神武改も慌てて、そこにとびのった。
 つまり、自然の形を装った昇降機だったのである。
 そして、それは一辺が五十米はあろうかという巨大なもので、神武改が全機のってもまだまだ余裕があった。

「……一体、どこまでゆくんだ?」

 動きはさほど早くないとはいえ、かなり長い。
 周囲は延々と岩壁であり、どのくらい潜ったか、感覚が狂わせられる。

「暑くなってきたな」

 神武改は密閉された狭い空間だから、熱交換式の冷房機が取り付けられている。大神は故障でもしたかと思い、外気温度計に目をやった。

「な!?」

 自分の目を疑った。
 その針は、摂氏一〇〇〇度を越えていたからだ。

「さくらくん。君の、外気温度計はどうなっている?」

 故障かとも思い、聞いてみるが、答えは同じだった。

「大神はん、地熱や。溶岩や!」

 江戸時代以来、噴火していないとはいえ、富士山は火山である。その地下には、今も溶岩が蠢き続けているのだ。

「こいつは、厄介なことになりそうだ」

 そして、その予感はあたった。
 昇降機がいよいよ下がりきった時、彼らの眼前に現れたのは、煮えたぎる溶岩と、おびただしい敵兵だったのだ。

「くっ。全機、昇降機中央にして輪形陣!」

 昇降機とその奥を繋ぐのは、神武改が一台づつしか通れないような通路である。しかも、その左右は切り立った崖となっており、一歩踏み外せば、溶岩にのまれてしまう。戦いながら通過するのは困難だ。

「隊長。こののままじゃ、いつまでたっても先にすすめねーぜ!」
「焦るな、カンナ。機会をまつんだ!」

 しかし、大神自身もその糸口がつかめなかった。
 敵兵は無尽蔵とばかりに繰り出されてくるし、作戦行動を行うにもその余地がない。

(どうすれば……)

 その時だ。

「こちら雪組隊長マイヤー。大神司令代理! 花組全機の光学感知装置を五秒間遮断!」

 とっくに外部との通話は不可能になっていたにもかかわらず、通信機から声がした。事態を完全には把握できないながらも、有無をいわせぬ口調に、大神は従う。
 そして、神武改の全機がそれを実行した次の瞬間、花組も風穴への突入時に用いた閃光弾が炸裂した。ほとんど同時に、重量物が落下した音が聞こえる。

「フェニックス・パワード・ブリーカー!」
「龍姫轟雷落とし!」
「魔仇滅生・神風烈華弾!」
「九尾連撃之術」
「天雷轟地撃昇波!」
「幸迅炎舞・駆瑠琥流!」
「パンツァー・シュツルム!」

 光学感知装置を再び活動させた時、敵は大きく陣を乱していた。
 そして、その混乱を引き起こした七機の霊子甲冑は、更に戦果を拡大しようとしている。

「帝國華撃團・雪組、参上!」

 雪組が昇降機の穴を降下し、戦場に駆けつけたのだ。
 マイヤー隊長以下、森沢香南、三田良子、エリシア・カニンガム、田中恵里、篠田清美、辰巳一子の七人から成る顔ぶれはいつもと同じであったが、その機体は始めてみるもである。

「マイヤー隊長。その霊子甲冑は?」
「光武改だ」

 降魔との最初の戦闘により大破した光武。
 しかし、帝撃工廠はこれを回収し、徹底的な改修を加えて、再び戦力化することに成功したのだ。

「さあ、ここは我々に任せて、先へ!」
「しかし……」
「この光武改、神武改に比べれば劣るが、神武と同等以上の力はでる。早くいけ、大神中尉!」

 時間がたてば、敵も態勢を整えてくるだろう。
 確かに、機会は今しかあるまい。

「わかりました。花組、前進!」

 神武改は細い通路を抜けて行く。
 それを渡りきると、再び広めの回廊となった。
 敵は、先ほどの場所に戦力を集中していたらしく、反撃は散発的なものにとどまっている。
 とはいえ、もう神武改の限界行動時間を越えていた。機体のみならず、隊員達にも疲労が見えてきてよい筈だ。

(その割には、霊力計が下がらないな)

 神武改には、操縦者の発する霊力を測定する霊力測定器が取り付けられていれる。精度はそう高くない簡易型のものだが、それでも疲労すればはっきりとわかる。

(壊れたかな?)

 そう思った大神は、他の隊員達にも状況を聞くが、皆、値は下がっていない。

「大神はん。地脈の力や!」
「どういうことだ?」
「ここは霊峰富士やで。日本でも一、二を争う地脈が集中した場所や」

 ツクヨミが回復の土地に選んだ理由である。

「その地脈の力が、花組にも作用してると思われますねん」
「なるほど……となると、急がなくてはならないな」

 そのような機能を備えていない筈の神武改にすら影響を与えるのだ。ツクヨミの回復は、もう時間の問題であろう。

「隊長、前方を!」

 マリアが砲台を発見した。
 進路を塞ぐように設けられたそれは、可搬式のものらしく、射程も短そうだ。すでに射線は確保できているのに、攻撃をかけてこないのが、その証拠である。
 しかし、効果もないところに防衛線を引くとも思えない。あるいは左右の壁面には固定式の砲台が設置されている恐れもある。
 実際、敵兵は攻撃態勢はとるものの、攻撃はしてこない。射程内で援護をうけた上での行動を企図しているのだろう。
 こうなると花組は苦しい。
 遮蔽物もなければ、援護もない状況下。
 純粋に戦術的に判断するならば、ここは退くべき場面だ。
 しかし、花組に要求されている戦略目標は、可及的速やかにツクヨミを倒すこと。
 どんな戦術状況下でも前進しなくてはならないのである。

「みんな、いくぞ!」
「おーっ!」

 最も防御力の高い剛武を中心に、左翼に真武、右翼に翔武を配置した楔型陣形で突撃する。

「前衛は防御重視。後方か部隊の攻撃で敵を崩す!」
「了解!」

 射程内へと前進してきた花組に、砲台からの砲撃が浴びせられる。
 砲台の方が射程が長いから、花組は一方的に攻撃されることとなった。
 しかし、その援護下に攻撃してくる敵は、前衛が足止めし、後衛でしとめていっている。
 もう少しで、砲台をマリアと紅蘭の射程にとらえることのできるところまではきた。
 しかし……

「大神さん。左右の壁面をよく見て下さい!」

 さくらが発見したのは、左右の岩壁に、半ば埋め込まれるような形で設置されていた砲台であった。
 各三門づつの計六門。その砲を守るように敵兵は戦線を張っている上に、砲同士も互いに射界を重ね、相互支援できるように配置されている。
 砲台を破壊することは、不可能ではないが、時間がかかる上に、損害も大きくなるだろう。

「左右に構うな。前方を突破するんだ!」

 前方の砲台の後ろは、また細い通路になっている。奥は金属の扉になっているようだが、その前までいけば、左右の砲台の射界からは逃れられる筈だ。

「破邪剣征・千花乱撃!」
「神崎風塵流・朱雀の舞!」

 さくらとすみれの必殺技が前方の敵を掃討する。
 射程の長いマリアとさくら、それに紅蘭の必殺技が正面の砲台に命中する。

「クワッサリー・レボスカヤ!」
「いったれ! 四天王ロボ!」

 それは、前方の敵を掃討することにもなる。
 花組は一気に前進していく。

「いけぇ!」

 左右の砲台から浴びせられる砲撃をまともに受けながらも、大神は両側面への反撃を許さなかった。ここは時間をかけずに突っ切るのが最良の策だ。

「カンナ! 俺は左の砲台をやる。右側は頼む!」
「まかせとけ!」

 最後に、通路を塞ぐ二門の砲台を、それぞれが目標に捕らえた。

「いくぜ! 桐島流空手奥義・一拳励魂」
「くらえ! 狼虎滅却・天衣無縫」

 既に損害を受けていた砲台は、耐え切れずに爆発する。

「みんな、早く奥へ!」

 自らは入り口に留まって、殿をつとめながら、花組を誘導する。
 その甲斐あってか、無事に全機が突破に成功した。

「あとは、この鉄扉だな」

 遠目で見ていた時よりも大きく感じる。神武改でも楽にくぐりぬけることができそうだ。

「大神はん。これ見てみぃや」

 紅蘭が、扉の中央に埋め込まれている宝玉と文様を指した。

「はっきりとはわからんが、封印の一種らしいで」
「封印!?」
「そうや。霊力が拡散しないように封じこめるな」

 霊力を集中するには、それなりの理由があるだろう。
 そして、今、考えられることは一つしかない。

「突破してきたのが最終防衛線――このむこうには、ツクヨミがいるということか」
「おそらく間違いないやろ」

 全員に緊張が走る。
 大神は、この扉を開けようとあたりを見回したが、それらしい装置などは見当たらない。

「隊長。おそらく、先ほどの側面の砲台の裏側にあったのではないですか?」

 マリアの意見には説得力がある。
 最終防衛線であるならば、それぐらいの警戒をしてしかるべきだろう。

「なーに。隊長。ようは通れさえすればいいんだろう?」

 カンナが剛武を扉の前に歩ませた。

「破っ!」

 気合もろとも、拳をぶつける。
 素手ですら自然石を割ることのできる彼女の拳だ。例え金属であろうと扉は歪み、次なる間への道を開く筈であった。

「な、なんだと!?」

 しかし、まるで何事もなかったかのように、扉には傷一つついてはいない。
 焦ったカンナは、何度も攻撃するが、結果は同じだ。

「大神はん。この扉、どうやら普通の素材じゃぁないようやで」

 様子を見ていた紅蘭が口を開いた。

「扶桑独特の金属みたいなんや。シルシウス鋼に似てるけども、もっと優れた素材や。あるいは、三種の神器に使われている素材と同系列のものかもしれん」
「なんだって!?」

 紅蘭の読みはあたっていた。
 この扉の素材こそ、神話に登場する超金属、ヒヒイロカネなのだ。

「それじゃあ、俺達の攻撃では……」
「そや。破ることはできへんやろうな」
「ちぃ」

 大神は思わず舌打ちしする。
 ならば、左右側面の砲台を含めて掃討しておくべきだった。
 今からそれをやろうと思っても、通路を出て、砲台の射界に入ったとたん、集中砲火を浴びてしまう。カンナの剛武の装甲をもってしても、それに耐えて砲台に接近することは困難だし、アイリスの瞬間移動も、砲台までは届かない。

「隊長、敵兵が接近してきています」

 マリアが報告してくる。
 通路に入った花組が、その扉を開けられないことを知っているのだろう。敵は次第に包囲を狭めるような形で、間合いを詰めてきている。

「マリア、紅蘭。制圧射撃で時間を稼いでくれ」
「了解!」
「了解やで!」

 ほとんど反射的に大神は命令を下したが、今回ばかりは妙案がうかばない。

「大神さん……」
「中尉……」
「お兄ちゃん!」
「隊長ぉ!」

 不安気に皆が呼びかけてくる。

「隊長。とても敵の接近を阻めません!」
「もう、時間の問題やで!」

 マリアと紅蘭の悲痛な報告。
 大神は決断しなくてはならなかった。
 もう残された道は、敵包囲を強行突破し、扉を開ける操作を行う。
 座して全滅を待つことを割けるには、それを選ぶしかないのだ。
 しかも、それとて全滅の可能性は高い。

(それでも、誰も死なせたくはない!)

 大神が自ら先頭に立ち、包囲網へ飛び出そうとした、まさにその瞬間だ。

「ラグナロック!」
「クアットロ・スタジオーニ!」

 霊力の奔流が敵を舐め、その包囲網を崩す。
 
「帝國華撃團・星組、レニ・ミルヒシュトラーセ参上!」
「同じく帝國華撃團・星組、ソレッタ織姫、参上で〜す!」

 明らかに光武系霊子甲冑とは設計思想の異なる、二機の大型霊子甲冑が戦場に姿をあらわしたのだ。

「大神はん。あれは、ドイツの開発した霊子甲冑、アイゼンクライトの、それも最新型や。V型<クロイツ>やで!」

 さすがに紅蘭は見抜いたが、なぜここにあるのか。ドイツでも数台しか完成していない筈なのに。
 それに、星組というのも聞いたことがない。

「大神隊長。僕たちは、花組結成以前――帝撃草創期に実験部隊として創設された、いわば花組のプロトタイプ」

 大神に問われる前にレニが口を開いた。
 そして、織姫が言葉を続ける。

「そうで〜す。花組ができるより前に解散していたんですけども、米田長官が招集したんで〜す」
「集合できたのは、この二人だけだけれどね」

 薔薇組といい、星組といい。
 米田は全てを見通していたかのようだ。
 彼の死は、体当たり攻撃により散ったが、決して自己満足のための死ではなく、帝撃にとって唯一有効な手段であったがゆえの死であることが、それだけでもわかる。

「大神隊長。今、ゲートを開く」

 レニがスイッチを入れた。
 びくともしなかった扉が、ゆっくりと開いていく。

「さあ、花組のみなさ〜ん。ここは私たちに任せて先に進むので〜す」
「し、しかし……」
「大神隊長。このアイゼンクライトV<クロイツ>は、神武改よりも性能は上。僕たちが雑魚を食い止めている間に、全力でツクヨミを叩く方が効率的だ」

 あくまで冷静に、理路整然としたレニの言葉に、マリアも同意した、

「隊長。ここは彼らを頼りとしましょう。我々は前に進まねば」
「……わかった」

 大神にもこれといった案があるわけではない。

「レニ、織姫くん。無理をする必要はないからな!」

 その言葉に、レニは笑みを浮かべた。

「部隊長としては『死ね』というべきだけど。そういうところが、大神隊長なんだろうね」
「ま、私たちに任せておいてくださ〜い!」

 それは嘘ではない。
 二人はまるで無人の野をいくがごとくして、敵を掃討している。

「よし、みんないくぞ!」

 大神を先頭に七機の神武改が扉をくぐる。そこは広々とした空間が広がっている。
 そして、その中央には彼らが追い求めていた“神”が鎮座していた。

「……きましたか」

 帝國陸海軍、夢組、月組、風組、雪組、星組。
 全てが花組をここに送り込むためにそれぞれの生命を賭した。
 それに報いるためには、ただ一つの結果を出すしかないのだ。



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