序章


 仙台真宮寺家裏庭。
 そこに、大神とさくらの姿はあった。
 父、一馬の墓参りに来たのだ。
 ここには、歴代真宮寺家の当主、またその妻や子らの墓地がある。ただし、外から隠すかのように岩の洞穴の中に作ってある。
 どれも立派な墓石で作られ、手入れがきちんとされている。

「ん?」

 ただ、その隅の方に小さく、何も書かれていない粗末な墓石がある。一応手入れはされているが、明らかに他の墓と雰囲気が違う。

「さくら。これは、何だい?」
「え?・・・ああ、それですか。」
「これも、お墓なのかい?」
「ええ。真宮寺家の人じゃありませんけどね。」

だったら何故手入れをしてあるのか。ますますわからない。

「誰のお墓なんだい?」
「一人じゃないんです。それはある組織にいた人たちのお墓です。」
「組織?」
「はい。壬生の狼、新撰組のお墓です。」

新撰組・・・その名を知らぬものはまずいないと思う。
幕末の動乱を駆け抜けてきた幕府最強の剣客集団である。

「これが?・・・でも、どうしてここに新撰組のお墓が?」
「・・・話せば、長い話です・・・・」

・・・・・話は、文久元年にまで遡る。

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