愛の戦士たち(第4話)  作・島崎鉄馬

第四話「因縁の対決」

新撰組の公演もいよいよ後半に差し掛かった。公演開始から連日超満員の状態が続く。モギリの大神はもちろん、その他の劇場関係者の疲労も限界に近かった。
入場者数は日に日に増えていく。ダイナミックなアクションシーンをもう一度見たいがためにリピーターが増えているのだった。
そんなある日。帝劇前に一人の女性が現れた。真っ赤なチャイナドレスを着て、大きな丸いめがねをかけた彼女の名は李紅蘭。
花組隊員にして花やしき支部支部長代理。言うまでも無く花やしき支部長は先の副指令、藤枝あやめだった。
(エライ遅れてもうたなぁ、みんな帰っとるんやろか?)
玄関から中に入る。
「・・・ん?」
すぐ横の受付で居眠りしている男性が居た。
大神だ。疲れたのだろう、ぐっすり眠っている。
(あらまぁ、大神はん。よう寝とりますなぁ。)
そっとしておこうと思い、立ち去ろうとするが、その時玄関から元気のいい声が響いてきた。
「ただいまでーす!!」
声の主は花組隊員、ソレッタ=織姫だった。
「あ、織姫はんも今お着きかいな?」
「チャオ、紅蘭。お久しぶりでーす。」
すぐに織姫も眠っている大神に気付いた。
「うふふ・・・中尉さんたら、居眠りしてまーす。」
「起こしたらあかんで、大神はん疲れとるんやから。」
何かとちょっかいを出したがる織姫はそんなことお構いなしだ。
思い切り息を吸い込んで・・・
「中尉さーん!出撃でーす!!」
条件反射で大神は突然起き上がった。
「あ?・・・あれ?・・・・」
寝起きでまだ何が何だかわからない。
「うふふ・・・中尉さーん、ただいまでーす。」
「あれ?織姫君・・・紅蘭も・・・いつ帰ってきたんだい?」
「ついさっきや。大神はんよう寝とったで。」
「え?・・・俺が・・・寝てた?」
誰しも大抵居眠りしたことを自覚している者は少ないだろう。
「そや、その机にグターッと寝とったで。結構オモロイ寝顔やったけどな。」
「うふふ・・・紅蘭も言うことキツイですね〜。」
2人と話をしていると椿が売店の中から出て来た。
「お帰りなさいませ、紅蘭、織姫さん。」
「ハァイ、椿。元気してたですかー?」
「はい!いつもいつも元気です!!」
紅蘭、織姫の復帰は大神にとっていろいろな意味で嬉しかった。
2人は持ち前の明るさゆえに花組のムードメーカー的存在であり、戦闘においても、紅蘭は後方からロケット弾で援護する重砲機、織姫は複数の敵を一度に攻撃できる。
この2人の復帰によって今までよりもずっと戦闘が楽になるであろう。
「紅蘭、織姫君。そろそろ着任届を出してきなよ。」
「あいな。ほなまたな、大神はん。」
「またあとでお会いしましょう、中尉さーん。」
2人は事務局へと向っていった。


その日の夕方。公演も終わり、観客が全て帰った頃・・・
支配人室の電話が鳴った。
「・・・はい、大帝国劇場。支配人の米田です。」
『米田中将、私です。山口和豊です。』
山口の声を聞き、米田の表情が真剣になった。
山口がお忍びで帝劇を訪れることはあるが、その時はごくありふれた普通の男性の格好をしている。その時は自分の身分を決して明かさない。
米田を中将と呼ぶときの山口は『帝劇のファン』ではなく、『帝國海軍大臣』の山口和豊になった時だ。
「どうかしましたか?」
『今夜、大神君と松平君をお借りできますか?』
「ええ・・・構いませんが。」
『8時過ぎに海軍省に来てもらいたいのです。よければあなたもご同席願いたい。』
花組正副隊長のみならず、米田司令まで呼び出すとはただ事ではない。
「わかりました。伺います。」
『ありがとうございます。それでは、また後ほど・・・』
電話を切り、米田は何かしばらく考え込んでいた。


午後8時。米田、大神、浩忠の3人は海軍省を訪れた。3人とも凛々しい軍服姿だ。
「久しぶりに中佐の軍服姿を見ました。」
「俺はこんな堅苦しい服装は好かん。動きにくいし。」
米田が横で笑っている。
「へっ、普段から着こなしてねぇからだろ?」
会議室の前で立ち止まり、米田がドアをノックした。
「米田一基、大神一郎、松平浩忠、参りました。入ります。」
ドアを開けるとそこには3人の男が居た。
海軍大臣、山口和豊。GF司令、吉田善吾。海軍次官、山本五十六。海軍の中で、帝撃の存在を知るのはこの3人だけだ。
「よく来てくれました。ま、おかけください。」
山口に促され、米田達は椅子に腰掛けた。
「まず、こんな時間に急にお呼び立てしたことをお詫びします。」
山口ら3人は頭を下げる。
「いや、どうぞ気になさらずに。どうぞ、ご用件の方を。」
「・・・では、お話しましょう。実は今朝、これが・・・」
山口が差し出したのは一通の手紙。表紙には果たし状の文字がある。
「果たし状?」
「誰がこれを?」
山本が話し始めた。
「それは自分の部屋に置かれていたものです。住所はわかりませんが、差出人は火車と書いてあります。」
「火車ですと!?」
火車・・・黒鬼会五行衆の一人。かつて2度に渡って卑劣な手段で帝撃を苦しめた男だ。1度目は紅蘭、2度目は織姫によって撃退された。
「あいつも生き返っていたのか。」
既に金剛と水狐の復活は確認されていた。
米田は果たし状の内容を読んでみた。
「・・・・こりゃあ・・・」
「何と書いてあるのですか?」
米田は一番重要なところを読んで聞かせた。
『帝國華撃團花組隊員、李紅蘭、ソレッタ=織姫。以上の2人に決闘を申し込む。時間は明後日の午後8時。築地にて行う。二人だけで来るべし。   黒鬼会五行衆 火車』
今日復帰したばかりの紅蘭と織姫宛だった。
なぜ海軍省の山本の部屋に届いたのかは不明だが、事は重大だ。
「これは・・・・本人に報せない方がよろしいかと・・・」
浩忠の進言に米田がうなずく。
「しかし、放っておいてはいつか本人に知られてしまいます。」
吉田の言うこともあり得る。今回は海軍省へ届けられたが、次は直接本人に届くことも考えられる。
「・・・ならば、花組の選抜隊だけで火車と対決するというのはどうでしょうか?」
大神の意見は名案だった。
6人の議論の末、選抜隊のメンバーは大神、浩忠、マリア、レニの4人が選ばれた。口が堅いというのが選ばれた理由だった。


帝撃に戻った3人は早速マリアとレニを作戦指令室に呼んだ。
「今回の任務はあくまで極秘裏に片付けねばならない。よって他言を禁ずる。特に、紅蘭と織姫にはな。」
マリアもレニもおおよそ察しがついた。
「今日、海軍省の山本次官の部屋に、紅蘭と織姫宛に果たし状が届けられた。差出人はあの火車だ。」
2人の表情が変わる。そこに現れたのは驚きの表情だった。
「火車まで・・・・あの男がまた私たちの前に・・・」
「それで・・・ボクらだけでその果たし状に応じる・・・というわけですね?」
実戦経験豊富なレニは洞察力が優れている。
「さすがレニ。察しがいい。奴の決闘に応じるのはこの4人だけだ。それから当日の公演は中止する。念を圧すがくれぐれも他言無用だぞ?」
「わかりました。」
「了解。」
かくして作戦会議は終了。


翌日。引き続き新撰組の公演が行われていた。
大神も今回は舞台の袖で見ることが出来た。
舞台の上では浩忠が今まさに最期の突撃をかけんとしていた。
「近藤さん、アンタはこの旗を捨てたが、俺はこいつを絶対に捨てねぇ。こいつを捨てたら、俺の人生は何だったのか、わからなくなる。みんなで決めた旗じゃないか・・・」
浩忠は馬に乗り刀を抜き放った。
「新撰組副長、土方歳三!!突撃ぃっ!!」
手綱を思い切り引っ張った。馬は後ろ足2本だけで立ち上がった。
そして浩忠は舞台の脇へと消えていった。
地響きのような拍手とともに幕は降りた。
「凄いな、中佐は。」
横には沖田総司に扮したさくらが居る。伝説の美剣士を演じるために、いろいろと苦労があった。
「はい。よく似合ってますね。」
「そう言うたら、今日も失神した人が出たいうてたで。」
公演が始まって以来、毎回必ず失神者が出ていた。
「こりゃあ、『シンデレラ』の記録を抜くかもしれねぇな。」
近藤勇を演じたカンナもはまり役で絶大なる人気を誇っていた。
それを横で聞いていたすみれがカンナの前にしゃしゃり出て・・・
「まあ、それもわたくしの演技指導の賜物ですわね。」
「演技指導って、おめぇはただ祇園祭の踊りの振り付けしただけじゃねぇか。」
カンナの突っ込みにいつものようにすみれは激怒。
「カンナさん!あなた何の指導も出来ないのに偉そうなことをおっしゃらないで下さいな!!」
「おうおう、上等だ!久しぶりにいっちょやるか!!」
公演が終わったとは言え、客席にはまだ客が居る。こんな時に喧嘩されては今後の客の入りに関わってくる。
「ま、待った二人とも。まだお客さんが大勢残っているから、喧嘩すると2人のイメージが下がっちゃうよ?」
2人ともはっとなって喧嘩をやめた。
「そうですわね、カンナさんのような方を相手にしていては、わたくしの品位に傷が付きますわ。」
「ケッ、一生言ってろ、バカ。」
今回は大神の制止が効いたようだ。


そして、決闘の日。空は朝から泣き出しそうな感じで雨雲が広がっていた。
「嫌な天気だな。」
テラスから大神が上空を見上げている。
「大神。」
後ろを向くと浩忠が立っていた。
「中佐、どうしました?」
「わかってるだろうな?今日が決闘の日だ。」
「ええ、わかってます。」
「そう言う意味じゃない。あの2人に断じて悟られるなと言ってるんだ。お前は顔に出やすい。カブをやる時を思い出せ。策を練るときは相手に決して悟られてはいけない。無表情で通せ。いいな?」
ちなみにカブとは、花札を使った遊びで、もっぱら賭け事に使われる。配られた花札にはそれぞれ1〜10までの数字が設定されており、一枚ずつ引いてその足し合わせた数で勝負する。9が一番強く、1がインケツといい最弱である。
これはポーカーや麻雀と同じように運に頼るところもあるので、勝負は最後までわからない。賭け事で一番やってはいけないことが顔に出すことである。良い手が来たといって喜ぶと相手に早上がりされてしまう。そして例え悪い手になっても決して顔に出して、相手に悟られてはいけないのだ。これがいわゆる「ポーカー・フェイス」の由来である。
「中佐、念のために言っておきますが、賭け事は日本じゃご法度ですよ?」
「うるせぇ、あんな面白いことやめられるかよ。」
「面白いって・・・今までどれだけ稼いだんですか?」
「一度のカブで、100円稼いだことがある。」
当時の金銭単位なのであくまで誤解の無いよう・・・当時の100円は大変な大金である。
「負けたときの最高額は、おいくらですか?」
「負けはな、無いんだよ。一度も。」
「そんなにお金を稼いで、一体何に使ってらっしゃるのですか?」
「さあ、何だろうな?」
浩忠はニヤッと笑ってその場を去った。

食堂で昼食をとっていると公演の稽古を終えたさくらたちがやってきた。
「あ、大神さん。」
「やあ、今終わったのかい?」
「はい、今日は公演がありませんから、たっぷり練習できますし。」
大神も花組達と共に食事することにした。
父親の急病で緊急に帰郷したアイリスを除く全員での食事。楽しい雰囲気のまま終わるはずだった。しかし、織姫が・・・
「それにしても・・・どうして今日だけ公演が無いですかー?」
その言葉に大神はドキッとした。もともと公演が入っていたのを突然中止にしたのだから、不思議がるのも無理は無い。
「そ、それは・・・」
大神が何も言えないでいると、マリアが代わりにしゃべった。
「今日は雨が降りそうだし、支配人も私たちの体のことを心配しているのよ、きっと。」
うまいフォローだ。ただ確かに今回の公演は派手なアクションを中心とした公演なので出演者の疲労は大きかった。
あまりにきついために月組の真田は出演を途中辞退したという。
「せやろか?ホンマは何かあるんとちゃうやろか?」
しつこく疑う花組にマリアや浩忠はうまくごまかしている。
大神は何も言えずに小さくなっている。
「大神さん、どうかしたんですか?」
横にいたさくらが心配そうに大神の顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか?顔色悪いですよ。」
「え?そ、そうかい?」
明らかにビクついている。
「大神さん、お疲れじゃないんですか?」
「ああ・・・その、ちょっと胃が痛いかな・・・」
「このところ働き詰でしたから、ご無理をなさらずに、休まれてはいかがですか?」
「ああ・・・そうするよ・・・」
大神は食事を半分近く残して食堂を出た。
その様子を、じっと織姫と紅蘭が見送っていた。


午後7時 大神は夕食を早めに取り、地下へ降りようとした。
しかし、作戦室に入る直前、呼び止められた。
「大神はん。」
後ろに紅蘭と織姫が立っていた。
「な、何だい?織姫君に紅蘭。」
「中尉さーん、あなた何か隠してますねー?」
「何や知らんけど、疲れとるはずやのにウロウロしとったやろ?」
昼間から挙動不審だった大神をずっと監視していたのだろう。
「べ、別に何も隠しては・・・」
「中尉さーん。」
織姫が作戦室脇の取調室のドアを開け、手招きしている。
「ちょっといらっしゃーい。」
不気味なほどに優しげな声で大神を呼ぶ。
紅蘭に後ろから押されて無理やり連れ込まれた。

椅子に座らされ、正面に織姫が座って、じっと大神の目を見る。
「・・・参ったな・・・花組隊長の俺が、まさか尋問されるなんて・・・」
テンションを上げてごまかそうとするが二人はただじっと大神を見ている。
「・・・・・」
織姫が大神の眼前までせまり・・・
「・・・吐け。」
と目を吊り上げて言う。

その頃、支配人室では、米田、かえで、浩忠による最終確認が行われていた。
「後1時間を切ったか・・・浩忠、準備は出来ているか?」
「はい、整備は万全です。」
「頼むわよ。4人だけで火車を倒すのはかなりきついけど、しっかりね。」
「はい、任せてください。」
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・
地下から大きな音が聞こえてきた。
「ん?・・・何だ!?」
「霊子甲冑の起動音・・・まさか!?」
すぐさま地下格納庫に急行した。


格納庫に行くと案の定、織姫機と紅蘭機の姿が無かった。
「くそ!誰だ、しゃべったのは!!」
浩忠が大声を出して怒っている。
「中佐・・・・自分です。」
後ろから大神が力無く自白した。
「2人にしつこく尋問され、隠し切れなくなって・・・」
浩忠は落胆したように大神を見つめている。
「貴様、それでも軍人か?機密事項をよくもペラペラとしゃべれるな。それでよく隊長が務まるな!」
大神は何も言えない。浩忠は元上官。しかも階級は浩忠の方が上。反論することは許されない。
「すべて・・・すべて自分の責任です。2人は自分が連れ戻します。」
「待ってください、隊長。」
マリアとレニが階段を下りてきた。
「隊長、ボクたちも行くよ。この任務はボクらがやらなきゃいけないんだし。」
「紅蘭と織姫を絶対に連れ戻しましょう。」
実に頼もしい2人だ。
「わかった、一緒に行こう。」
当初の選抜隊の3人が揃った。残る一人は、戦意を見せない。
「副長、行きましょう。」
マリアの誘いに対し、浩忠の答えは・・・
「断る。俺は行かんぞ。」
「え?」
「大神、テメェが自分で蒔いた種だ。自分で枯らせろ。」
浩忠は階段を上がっていった。
大神は呼び止めもせず、ただ黙って見送った。
「よし、大神。行って来い。行って、あの2人を連れ戻して来い!」
「了解!!」
大神達3人は米田とかえでに敬礼した。


その頃、築地に到着した紅蘭と織姫は・・・
「・・・どこにいるですかー!!姿を見せなさーい!!」
織姫の声が聞こえたか、市場の屋根の上に人影が現れた。
紅いコートに身を包んだ男、金色の髪の毛、そして、暖かさをまったく感じさせない冷たい目。
黒鬼会五行衆・火車。
「やっと出よったな、火車。」
「本当にしつこいでーす。とっとと地獄に帰ってくださーい。」
火車は不気味な笑みを浮かべている。
「クックックック・・・・・お前達には地獄の恐ろしさはわからんだろう?だが、すぐにわかるさ。私が地獄に送ってやる!!」
「前の時みたいに、アンタなんかすぐにやっつけてやりまーす!!」
織姫が天に指をかざした。バラ色の光が発せられ、火車に一直線に向っていく。
「紅い稲妻、受けてみなさーい!スパーク・レーザー!!」
火車はおろか、建物まで爆発した。
「楽勝でーす。」
「フハハハハ・・・・・!!」
煙の中から笑い声がした。現れたのは火車の乗る魔操機兵「五鈷」。
「燃やしてやる!燃やしてやるぞぉっ!!」
両腕の火炎放射器を紅蘭と織姫に向ける。
「さあ、覚悟しなさい。」
と、その時・・・
「待てぃっ!!」
大神の声がした。しかし姿は見えない。
「むっ!?大神一郎!どこだ、どこにいる!!」
「俺はここだ!!」
五鈷の後ろに大神の神龍立っていた。
「亡霊め、その物騒な物をしまって大人しく退散しろ!」
「黙れ!貴様の方こそ命は無いぞ!!」
「俺の言葉が聞こえないと見える。行くぞ!!」
大神機の両脇からマリア機、レニ機が続く。
「大神はん、マリアはん、レニ!来てくれたんかいな!!」
「中尉さーん、さっきはごめんなさーい!悪気はなかったでーす!」
「わかってるよ、織姫君。さあ、行くぞ!!」
5人は五鈷に向って突撃していった。


その頃帝劇では、大神達が出動したことを知り、さくらたちが出撃準備を進めていた。しかし、浩忠が出撃を許そうとしない。
「どうしてダメなんですか!!」
温厚なさくらも真っ向から浩忠に食って掛かる。
「この一件は大神の不手際が招いたのだ。奴が責任を持って片付ける。手出しは無用。」
「でも、松平さん!!いくら大神さんたちでも、あの火車相手に楽に闘えるわけないじゃないですか!!」
「そうだぜ、副長。いくら何でも、5人じゃ・・・」
「おい、カンナにさくら。それからお前ら。お前らの大神への信頼てそんなものか?大神が自分で責任もってやると言った。だから俺はその言葉を信じる。大神は必ず織姫と紅蘭を連れ戻してくる。俺たちはただ信じて待ってればいい。」
「松平さん・・・・」
浩忠は目を閉じ、何も言わなくなった。


一方、火車は魔操機兵・焼塵を投入。さらにあらかじめ仕掛けておいた十字焔などを駆使して持久戦に追い込もうとする。
しかし花組はそうはさせまいととにかく火車に肉薄していく。
「ええぃ!貴様らゴミどもに、この私が負けるかぁっ!!」
五鈷の火炎放射器が天を向く。
「いかん!この技は!?」
「五行相克・紅蓮火輪双!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォッ!!
大神達に火の雨が降り注ぐ。
必死に回避するが全員ダメージを負ってしまった。
「く・・・・み、みんな、大丈夫か?」
「わ、私は大丈夫です、隊長。」
「外部に一部損傷アリ。」
「私はほとんど食らってませーん。大丈夫でーす。」
「ウチも、あまりダメージは無いで。」
損害は全員致命傷には至らなかった。
「そんなバカな・・・紅蓮火輪双を受けて、なぜ立ち上がれる!?」
うろたえている火車に紅蘭が叫ぶ。
「人の命を弄ぶアンタなんかに、ウチらは絶対に負けへん!ウチらは必ず勝つ!!勝ってみんな一緒に帝劇に帰るんや!!」
大神も続く。
「火車、人間はお前の言うようなゴミじゃない。人間は愛し合い、平和を願い、仲間同士で助け合う、すばらしいものだ!」
「ふざけるな!人間などゴミだ!人間以上のゴミなどあるか!!何が愛だ、何が平和だ、何が仲間だ!そんなものは幻だ!!」
その言葉に織姫が激怒。
「アナタの方がよっぽどゴミでーす!同じ空間に居ると思うだけで虫酸が走りまーす!!さっさと地獄に帰ってくださーい!!」
「行くぞ、みんな!!」
「了解!!」
大神の合図と共に全機一斉に攻撃を開始した。
なかでも凄まじかったのは紅蘭と織姫の攻撃だ。
新しく改造した紅蘭の12連装ロケットランチャーの威力は絶大。ことごとく敵をやっつけていく。
また、織姫のレーザー攻撃も的確に敵を捉え、確実に葬っていく。
大神、マリア、レニも負けてはいない。
わずか数分で五鈷を除く敵は全滅。ついに火車を追い詰めた。
「覚悟しろ、火車!!もう逃げられんぞ!!」
「おのれ!こうなったら、自爆してでも貴様らを倒してやる!!」
五鈷が不気味な紅い光を放ち、突進してきた。
「な、なに!?」
ガキィッ!!
「うわっ!?」
レニとマリアの機体に腕を伸ばし、押し倒した。
「レニ!マリア!!」
「く・・・ダメです!動けません!!」
2人とも五鈷が上に乗って身動きが取れない。
「火車ぁぁっ!!」
大神は二刀を抜き放ち、五鈷に斬りかかった。
「フハハハハ!!無駄だ、大神!」
大神の刀がまったく刃が立たない。
「くそぉっ!」
「大神はん!どいてや!」
紅蘭が叫んだ。大神は言われた通り五鈷から離れた。
「行くでぇっ!チビロボ・改!!」
紅蘭自作の兵器、相手の動きを止めてダメージを与えるチビロボが発射された。
ガシッ!
五鈷の機体の至るところにしがみつき、電流を流す。
「ぬうぅっ!?」
「織姫はん!!」
紅蘭が合図した。織姫は既にレーザーのエネルギーを充填していた。
「行きまーす!スパーク・レーザー!!」
バシュウウウウゥゥッ!!
五鈷の両腕を叩き落した。
「何っ!?」
バランスを崩した五鈷はグラグラと揺れ始めた。
「今だ!そこをどけえぇぇぇっ!!」
大神の神龍が高々とジャンプ。五鈷に飛び蹴りを放った。
ガシャアアアアァァァン!!
五鈷は真後ろに倒れ、動かなくなった。
「マリア!レニ!脱出するぞ!!」
「了解!!」
2人とも起き上がり、一気に戦線離脱する。
「フハハハハ・・・・」
火車は死に行くとわかっていながら、なぜか笑っている。
「・・・華撃團・・これでいい気になるな。・・最後に笑うのは私たちだ・・・我が偉大なる首領に・・・栄光あれぇぇぇっ!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォッ!!
火車は壮絶なる自爆を遂げた。


その頃、敵の本部では・・・
「火車め・・・死におったか・・・・」
首領が水晶を覗き込んで火車の自爆を確認した。
「所詮・・・一度帝撃に敗れた負け犬・・・勝てるはずがありますまい・・・」
3人の大幹部の1人、イオが控えている。
「フ・・・それもそうよな。」
「・・・閣下、恐れ多いことですが・・・」
「・・・言ってみよ。」
「私めを、仏蘭西へ派遣してください。」
「仏蘭西?」
「現在、花組で最も霊力の高い小娘が仏蘭西に戻っているとか・・・これを捕えれば、奴らの士気も戦力も落ちましょう。」
「フフフ・・・イオ。その方、なかなか頭がキレるな?」
「お褒めに預かり、光栄です。」
果たして、仏蘭西へ戻ったアイリスの運命は・・・

To be continued・・・


キャスト

大神一郎
  陶 山 章 央

李紅蘭
  渕 崎 ゆり子

真宮寺さくら       神崎すみれ
  横 山 智 佐      富 沢 美智恵
マリア=タチバナ     桐嶋カンナ
  高 乃   麗       田 中 真 弓
レニ=ミルヒシュトラーセ   松 平 浩 忠
  伊 倉 一 恵      堀   秀 行

藤枝かえで
  折 笠   愛

火車
  関   俊 彦
イオ
  古 川 登志夫
首領の声
  難 波 圭 一

山口和豊       吉田善吾
  羽佐間 道 夫     宝 田   明
山本五十六
  納 谷 悟 朗

米田一基
  池 田   勝

ソレッタ=織姫
  岡 本 麻 弥


次回予告

やっほー、アイリスでーす!!
あのねぇ、今度アイリスとお兄ちゃんとレニの3人で
巴里に遊びに行くの。
楽しみだね、ジャンポール?
次回、愛の戦士たち
「小さな友情」
照和桜に浪漫の嵐!!
アイリス、お兄ちゃんの役に立ちたい・・・


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