平城11年 7月
劇場に一人の老人がやってきた。元紐育華撃團の大河新次郎である。現在は俳優事務所を経営している。しかし、裏では来るべき日に備え、華撃團の隊士たちを育成している。キャサリンはその中の一人である。
「……何年経っても、時代が移り変わっても……ここだけは変わらないな。」
新次郎は玄関の前に立ち、劇場を眺めながらそう呟いた。
支配人室に行くと、一基と和馬がいた。
「やあ、大河さん。ようこそ劇場へ。」
「一基か。久し振りだね。そっちは和馬か。」
「はい、お久しぶりです。」
しばし、世間話をしていると、話題がキャサリンのことになった。
「そうだ。……ローズはうまくやってるか?」
「キャサリンですか……まだ『性格に問題あり』ですね。」
「大河さんも、人が悪い。あの性格は大問題ですぞ。」
「ハハハ……ま、あれはあれで可愛げがあっていいじゃないか。」
どこに可愛げがあるんだ、と一基と和馬は心の中で思った。
花組隊士たちは映画の撮影に出掛けている。
タイトルは「蜘蛛男爵」。ホラー映画である。出演するのはキャサリン、メイリン、弥生の三人。明日香とゆり子はロケに同行し、三人を手伝っている。
百年ほど前のヨーロッパが舞台となる。蜘蛛の好きな男爵がいた。彼は世界中を飛び回って蜘蛛の珍種を集めていて、つまりマニアだった。周囲の人々は気味悪がって『蜘蛛男爵』と呼んだが、本人は気にも留めず、夫人と娘も、男爵に理解を示していた。
あるとき、男爵夫人が誤ってタランチュラという毒蜘蛛に刺されてしまい、発作を起こした。苦しさのあまり暴れ回り、やがて屋敷の近くにある沼に落ちて死んでしまったのだ。
男爵と娘は酷く嘆き悲しんだ。男爵は気が狂ってしまい、娘は母親が帰ってくることをひたすら神に祈り続けた。
だが数日後、突然夫人が戻ってきた。しかし、その正体はタランチュラで、男爵と娘の命を狙った。危険を察知して脱出した二人は屋敷を爆破し、毒蜘蛛を殺した。……というのがこの映画のストーリーだ。
映画の撮影は無事に終了し、隊士たちは久し振りに劇場へ戻ってきた。
「あ〜!やっぱり劇場は落ち着きますね!」
明日香が真っ先に劇場に入り、背伸びをする。
「何言ってんだか。家じゃないのよ、ここは。」
「ええやないの。ここは第二の家みたいなもんやさかい。」
キャサリンが争いの種を蒔かないよう、ゆり子と弥生は常にキャサリンの制止に回っている。
そこへ、大鳥が一行を出迎えに玄関へやってきた。
「やぁ、お帰り。無事に戻ってきたね。」
「私が居るんだから無事に決まってんじゃない。」
「あ、キャサリン。大河さんが支配人室で君を待ってる。」
「社長が?わかったわ。」
キャサリンは荷物を置いて支配人室へ向かった。
「あの大鳥さん。大河さんって?」
「元紐育華撃團の大河新次郎さん。今はキャサリンが所属する事務所の社長だ。」
「つまり、私たちの大先輩ってことですね。」
「みんなも大河さんに引き合わせることになってるから、帰ってきてすぐで悪いけど、荷物を部屋に置いて支配人室に行ってくれ。」
明日香たちが部屋へ向かう中、一人だけ遅れている人物がいる。
(メイリン?)
普通なら一番に駆け出して行きそうなものだが、先ほどからメイリンは話の輪にも入ってこないし、口数も少ない。
支配人室で花組隊士たちは大河新次郎と対面した。全員元気良く挨拶するものの、メイリンだけはどこか様子が違う。無理に笑っているようにも見える。
そのあと、大鳥はメイリンの部屋を訪ねてみたが居なかった。
ちょうどそこへ、明日香が通りかかった。
「大鳥さん、どうしたんですか?」
「ああ、ちょっとメイリンの様子が変だったから……」
「やっぱり、そう思います?」
明日香だけでなく、弥生たちもメイリンの異変には気付いていた。
メイリンは撮影中から様子がおかしかったという。もっともプロなので演技はちゃんとしていたが・・・・
「いつも隣で寝てたんですけど・・・・メイリン、寝ながら泣いてました。」
「泣いていた……」
明日香とわかれた後、大鳥は屋根裏部屋でメイリンを見つけた。
薄暗い部屋の隅にうずくまり、写真を見つめながら泣いている。
「どうした、メイリン。」
「……」
大鳥に気付いたメイリンは無言で涙をぬぐい、写真をしまってその場を立ち去ろうとする。
「待てよ、メイリン。……どうしたんだ、いつものお前らしくもない。」
「……ボクだって泣きたくなる時ぐらいあるんだ。」
「じゃあ何を泣く?話してくれないか?」
「……お父さんやお母さんのことを考えていたんだ。」
一年前、福岡市を降魔が襲った。
そのときメイリンと家族は単身赴任していた父・明輝(メイキ)を訪ねて福岡市に来ていた。
「みんな降魔のせいだ。父さんも、母さんも……賢兄(ケンニィ)も、長兄(チョウニィ)も……みんな殺されてしまったんだ。」
しかし、メイリンだけは生き残った。意識が戻ったのは病院のベッドの上。退院した後、破壊された我が家にうずくまった。時が経つのも忘れて……
どれくらいの時間が経ったのか、メイリンは覚えていない。
そのころ明日香も和馬にメイリンのことを尋ねていた。
すると和馬もまた、メイリンの過去……一年前、福岡で彼女と出会ったときのことを話し始めた。
『娘さんの家か?』
メイリンの隣に立って瓦礫の山になった家を見つめる一人の男。調査のために福岡に来た和馬である。
『娘さん、家族は?お父さんやお母さんは?』
『ボクだってボウフラみたいに湧いて出たんじゃないよ。ちゃんと……父さんと母さんも……兄さんも二人居たんだ。』
『……』
『でも……あの化け物のせいで……』
メイリンの目は怒りに満ちている。和馬は直感的に、この娘は危険だと思った。
「なぜ、危険だと思ったんです?」
「メイリンから憎悪と共に、強い霊力を感じた。だから俺はあいつを引き取った。」
その直後、メイリンは和馬が引き取り、華撃團入隊のための訓練を受けさせた。そしてメイリンは凄まじい執念ですべての訓練と試験をクリアーしてきた。
しかし、東京に再び降魔が現れた時、メイリンは出撃すると言って聞かなかったという。だが、和馬は出撃を許可せず、結局降魔は弥生・ゆり子、そして大鳥らによって倒された。
「ボクは降魔を倒したい……降魔を倒して、父さんや母さん、兄さんたちの仇を討ちたい……それだけで、華撃團に入隊したんだ。」
メイリンは正式に入隊し、戦闘に参加し始めてからも、家族の仇を討ちたいと思っている。
だが、『蜘蛛男爵』の撮影で母親の復活を願う娘を演じた。娘が願い続けた母親の復活はかなった。だが、母親は毒蜘蛛になっていた。そして娘は父と共に毒蜘蛛を倒した……この娘の役がメイリンの心を大きく揺さぶった。
「でも……近頃わからなくなってきたんだ。……仇を討ったら……それでどうなるんだろうって。」
「……仇討ちか……迷うぐらいなら、やめた方がいい。」
「イヤだ!降魔を倒すってみんなと約束したんだ!そうでないと……ボクは何のために……何のためにここに来たんだよ!!」
メイリンは泣きながら下りて行った。
大鳥はメイリンが落としていった家族の写真を拾い、階段を下りて行った。
メイリンが仇を討つために入隊したことを知った明日香は、大鳥と違い、メイリンに仇を討たせてやりたいと思った。だが、和馬はそうは思わなかった。
「仇討ちってな、結局、そこからは何も生まれないんだよ。……仇を討てばさらなる憎悪を生む。そして当人は又仇となり、狙われる身になる。」
「ですが……」
「多分、大鳥も……今の話を聞いたら仇討ちなんてやめろと言うだろうよ。あいつはそういうのを一番嫌うからな。だが、あいつを非情の男と見ては間違いだ。お前たちが家族のようにいつまでも一緒にいること、それがあいつの唯一の願いだ。」
「大鳥さんのご家族は?」
「『語らず聞かず』だ。」
大鳥の家族もまた、既にこの世にない。和馬がそう言わずとも、明日香にはそれがわかった。
その日の午後、さつきと共に真木五郎という教授が劇場にやってきた。
彼は1年前に降魔の細胞を採取して以来、降魔の生態について研究を続けている。この日本……いや、世界で一番降魔の実体についてよく知っている人物である。
「いやぁ、教授。久し振りですな。」
「大神さん、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」
一基が真木を出迎えた。一基は華撃團復活にあたり、降魔をよく知る真木を迎えた。彼の研究のお陰で降魔の運動能力がわかり、華撃團を勝利に導いたことがある。
「実は……ちょっとお耳に入れておきたいことが。」
「……悪い報せですか?」
「―と思いましたので。」
真木の調査によるとそれまで東京の地下に生息していた降魔の群れが、1週間ほど前に忽然と姿を消したというのだ。
「……どういうことだ?」
「眠っていた降魔が自分の意志で目覚めて群れごと地下を移動したとは考えられません。」
「ではどうして群れが消えたのです?」
「まさかとは思いますが……何者かが移動させたのでは……」
考えられることは一つ。神龍軍団が降魔の群れを移動させた。
脇侍に代わる戦力として降魔を実戦に投入することに決めたのだろう。
その夜、大鳥の部屋を清志が訪ねてきていた。
清志もまた降魔の一団が姿を消したことを知り、報せに来たのである。
「そうか……降魔が……」
「恐らく神龍軍団の仕業だろうと思うが……しかし……大量の降魔を実戦投入されたのでは……」
「おまけに時期が悪い。」
「どういうことだ?」
メイリンは降魔に強い憎しみを抱いている。いま降魔が現れたらメイリンは何をするかわからない。
「なるほどね、あの時の戦いで両親を。」
「ああ……ムリもないんだが……」
「子供にはわからないだろ。仇討ちってのがどれだけ無意味なものかってことが。」
清志が帰った後、大鳥はメイリンの様子を見に行った。だが、彼女は部屋には居らず、中庭のベンチに座って夜空を見上げていた。
「メイリン。どうかしたのか?」
「……星を見てたんだ。」
「星……ね。」
大鳥もまた隣に座って空を見上げる。
「星って……いつもボクを優しく見守っていてくれる。母さんみたいに……」
「……(やっぱりな……家族のこと思ってたのか)……これを返そう。屋根裏部屋に落として行っただろう。」
両親の写真を返してやると、メイリンは写真を見ながら呟く。
「……強く優しかった父さん……いつもボクを見守ってくれていた母さん……一緒に遊んでくれた賢兄、長兄……ボクの大切な家族……でも……もうこの世に居ない……」
「……メイリン、まだ仇を討ちたいのか?」
「うん……でも……仇討ちして……それで父さんたちが生き返るわけでもないのに……」
メイリンの心には明らかに迷いが生じている。華撃團に入った理由、戦いを続ける理由がわからなくなってしまっているのだ。
「……だから言っただろう、迷うぐらいなら仇討ちなんてやめた方がいいって。」
「……もう、寝るよ。」
同じことを言われてさっきは怒ったメイリンだったが、今度は大人しく自分の部屋へ戻っていった。
その様子を2階からジッと見つめる人影があった。
浅井竜司。先月、花組副長に任命された男で、陸上自衛隊から推薦されて来た。しかし、霊力は低いので戦闘に参加することはできない。本部でレーダーなどを駆使して隊士たちに戦況を伝えるのが主な任務だ。
「……思った通り、メイリンは心が揺れ動いているようだな。」
しかし竜司は隊士たちとは親しく付き合おうとはしない。あくまで任務遂行のための付き合いしか持とうとしない。それゆえ、隊士たちの印象はあまりよくない。
部屋に戻ったメイリンは家族の写真を見つめている。
泣くでもなく、悲しむでもなく、ただ呆然と見つめている。
『家族を蘇らせたいか?』
「!?」
どこからか声が聞こえてきた。
メイリンはヌンチャクを構えて警戒するが、姿は見えない。
「誰?……どこに居る!?」
『大声を出さずとも……姿を見たければ見せてやる。』
闇の中から姿を現したのは神龍軍団五人衆の一人、紅鶴。
「お前は……神龍軍団の!」
「メイリン……お前の家族を、蘇らせてやろう。」
「そんな……そんなことが!」
「出来る。われらに力を貸せば、な。」
「……どうしろって言うんだ?」
「なに、簡単なことだ。」
それから間もなく、紅鶴は姿を消し、そしてメイリンとメイリンの新武もまた、劇場から消えた。
5分後、霊子甲冑の整備に地下へ下りたゆり子が異変に気付き、直ちに警報が鳴り響いた。
メイリンを除く全員が作戦指令室に集合。間の悪いことに一基と和馬は不在。代わりに指揮は新次郎が執ることになった。
「やはりメイリンは居ないか。」
「新武もあらへんかったわ。出てって間もないみたいやったけど。」
「脱走か?」
竜司の発言には明日香たちが反発する。
「メイリンは脱走なんかしません!」
「だが、現実に彼女は新武に乗って行方をくらました。これが脱走でないのなら、何だと言うのだ?」
「まぁ待て竜司。結論を出すにはまだ早すぎる。」
「とにかく、出撃するように。一刻も早く彼女を探し出すんだ。」
しかし、出撃するには問題がある。
「しかし大河さん。新武に乗り込んでの出撃は迎撃任務に限られています。」
「実戦訓練ということで処理する。」
ビィーッ!ビィーッ!
また警報が鳴り出した。しかし、今度は敵出現を報せる警報だ。
「永田町に脇侍出現!数は10!」
「敵はまだ脇侍を持っていたのか?」
「脇侍工場も格納庫も破壊したはずなのに……まさか新しい施設を。」
「いずれにしても、下手な言い訳をせずに済んだ。出撃だ!」
ただちに全員新武に搭乗し、出撃する。
『全機に告ぐ、永田町の脇侍をさっさと片付けてメイリンの捜索に向かう!行くぞっ!!』
現場に到着すると、10機の脇侍が国会議事堂を占拠していた。
しかし、大鳥たちを驚かせたのは脇侍に混じってメイリンの新武がいたことであった。
「メイリン!?」
『名を呼ぶなと言ったはずだぞ、明日香君!』
「す、すいません!」
『フェニックス、聞こえるか。なぜ君が脇侍と一緒に居るんだ!』
しかしメイリンは答えない。黙ったまま武器のヌンチャクを構えた。
『よせ!君とは戦いたくない!』
「ボクはお兄ちゃんたちと戦わないといけないんだ。」
『なぜだ!なぜ味方同士で戦わなくてはならないんだ!』
メイリンの後ろから出てきたのは紅龍だった。
「メイリンはもはやお前たちの味方ではない。我ら神龍軍団の仲間となったのだ。」
『なんだと!?どういうことだ、フェニックス!!』
「ボクの家族を生き返らせるため……ボクは、みんなを倒す!」
「そういうことだ、やれ、メイリン。」
メイリンの新武が脇侍と共に突撃してきた。大鳥たちも散開して応戦する。脇侍は明日香たちに任せ、大鳥はメイリンと戦う。
『やめろ!俺は君と戦いたくない!!』
しかしメイリンは聞く耳を持たない。多彩な技を次々と繰り出して大鳥を倒そうと本気で攻撃してくる。大鳥も避けるのに精一杯。反撃する暇もない。
だがいくら大鳥が避け続けてもメイリンは武芸十八般を極めた武道家。一瞬の隙を突かれてヌンチャクが直撃、倒されてしまった。
『メイリン……お前……本気なのか……』
「本気だよ……ボクは……父さんや母さん……兄さんたちと一緒に居たいんだ。だから……」
『聞け、メイリン……人が一生懸命生きるのは何故だと思う?・・・・それは命の炎を燃やすのが一度きりだからだ!TVゲームのようにリセットすることも、生き返らせることも出来ないから、人は頑張って生きていくんだ!君の両親が奴らの手で生き返ったとしても、彼らが喜ぶと思っているのか!?』
大鳥は必死にメイリンを説得する。通信で名を呼んでいることに気付かないほど、大鳥は熱くなっている。
「でも……でもボクはみんなと一緒に居たいんだ!」
「君が悪に手を染めてまで、生き返らせて欲しいと願うはずがない!!」
「……」
メイリンは武器を下ろした。これを見た紅龍は……
「メイリン、お前は家族と一緒に居たいのではないのか?首領のお力で生き返らせてやろうと言うのだぞ?」
「黙れ……ボクが……ボクが間違ってたんだ。過去ばかり振り返っていたから、ボクは弱くなった……例え一時でも、悪に力を貸した自分の心の弱さが許せない……そして、ボクを誘惑したお前は、もっと許せない!!」
通信を本部で聞いていた大河はホッと胸を撫で下ろした。しかし竜司は……
「大河さん。大鳥隊長は通信でメイリンの名を呼んでしまいましたが……記録しますか?」
盗聴などにより外部に隊士の名が漏れぬよう、戦闘中はコールサインで呼ぶことになっている。これまでも通信で名を呼んでしまった隊士には罰則が設けられている。
「……いや……その必要はない。メイリンの説得に成功した功績で、罰も帳消しにする。」
「しかし・・・・」
「この件は、これまでだ。……・(何となく、一郎叔父に似てきたな。)」
新次郎はニコニコしているが、竜司は何となく不服そうだ。
既にメイリンが思うように動かないと悟った紅龍はニヤッと笑い、手を空にかざした。
「妹(蒼龍)の代わりになるかとも思っていたが……所詮は人間の小娘か。残念だ……出でよ、降魔!!」
雷が落ち、その地面から四匹の降魔が姿を現した。
「降魔!やはり貴様らの仕業だったのか!!」
「フフフ……脇侍に代わる新たな主力兵器だ。さぁ、存分にその力を……」
紅龍が降魔に攻撃開始を命令する前に、メイリン機が降魔に攻撃を開始した。
「大っ嫌いっ!!」
バキイイイィィィッ!!
得意のヌンチャクを振り回して降魔に反撃の暇を与えない連続攻撃を繰り出す。
「かたきぃっ!」
目にも止まらぬ攻撃に降魔はなす術も無くボコボコにされ、あっという間に全滅させられた。
「な……降魔が……」
「メイリンって……凄い……」
大鳥たちはポカ〜ンと呆けたようにその様子を見つめている。
一方の紅龍は怒りに体を震わせている。
「おのれ……こうなったら、私自ら相手をしてやる!!」
魔操機兵に乗り込んだ紅龍はいきなり必殺技を繰り出してきた。
「燃え尽きてしまえ!爆龍炎陣!!」
ゴオオオオオオオオオォォォォォォォォッ!!
凄まじい炎が大鳥たちを襲う。だが……
「ダイヤモンドダストォッ!」
弥生の冷凍光線が炎の威力をわずかばかり弱めたため、大破するには至らなかった。
「全機、散開!攻撃開始!!」
『了解っ!!』
四方に散らばった各機がそれぞれ攻撃を開始。前後左右から攻撃を喰らい、紅龍機は多大なダメージを負う。そして・・・・
「フェニックス、止めを刺せ!!」
『オッケェーッ!』
ヌンチャクを振り回しながらメイリン機が止めを刺しに突っ込んでいく。
『ボクの技を、かわせるかな?……爆裂棍!!』
「くっそおおおおおぉぉぉっ!!」
バキイイイィィィッ!
メイリンの一撃を受けた紅龍機は炎に包まれた。
「フフ……ハハハ……この私が……子供一人にやられるとは……蒼龍……俺も……お前の……もとへ……」
ドゴオオオオオオォォォォォォッ!!
やがて爆発炎上。紅龍機は木っ端微塵に砕け散った。
「終わったか。」
メイリンはハッチを開けて機体から降り、皆に向かって頭を下げた。
「みんな……ごめんなさいっ!ボクが弱かったばっかりに……お兄ちゃんにケガまでさせて……」
すると大鳥も機体を降り、メイリンのもとに駆け寄る。
「謝る事はないよ。俺が勝手に飛び出してメイリンのヌンチャクに当たっただけだから。……それから、ありがとう。戻ってきてくれて、感謝するよ。」
「お兄ちゃん……」
「さ、帰ろう。俺たちの、第二の家へ。」
「……うんっ!!」
このときのメイリンの笑顔はいつもよりも輝いていたと、明日香は後に語っている。
その後、映画『蜘蛛男爵』の試写会が行われた。メイリンたっての希望で、新たにラストシーンが撮影しなおされた。男爵と娘が母の姿をした大蜘蛛を殺し、娘が死んだ蜘蛛に優しく手を触れるシーンである。
「……お母さん……もう……泣かないよ。お父さんと一緒に、精一杯……生きていくから。天国で私たちを見守っていてね。」
このときのメイリンはまるで母親のような優しい目をしていた。
映画を見た大半の者たちはこのシーンのメイリンに感動を覚えたという。メイリンの心情が変化した背景に何があったのか、観客たちは知る由もなかった。
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キャラクター紹介
明 鈴(Mei-Rin) C,V:釘宮 理恵
身長:148cm 体重:42kg 生年月日:1988年12月14日 年齢:11歳 出身:上海 血液型:C
特技:格闘技・ヌンチャク 階級:花組隊士 コールサイン:フェニックス
降魔による最初の攻撃で両親や兄弟たちと死別。その後入隊したが、最初の出撃には参加しなかった。東京華撃團最年少隊士でありながら、武芸十八般を極めた天才武道家である。おまけに一人称は「ボク」。少女というよりは少年に思える。彼女とまともに喧嘩して勝てる者はいない。見事なフットワークを活かして敵の懐に潜り込み、必殺の一撃をお見舞いする攻撃を得意としている。実戦では頼りになる存在だ。好きな食べ物は生卵。なんと中身をそのまま飲み干してしまうだけでなく、殻もおやつ代わりに食べてしまう。おかげで骨も体もかなり丈夫になっている。
鈴のように明るく元気な声で話すことが初期設定だったので中国人風にメイリンと名づけました。