第二幕
「スター、来日」


 平城11年 5月。
 先月の舞台公演『愛ゆえに』は大盛況だった。かつて帝國華撃團も公演を行ったことのある演目だ。主演は弥生。明日香もこの舞台からデビューした。脇役だったためか、幸いにも目立ったNGはなかった。
・・・・が、本人には相当な苦痛だったようで、舞台が終わるといつもバタンキューであった。

ある日、一基は大鳥を支配人室に呼び出した。用件は・・・・

「新人・・・・ですか?」
「ああ。アメリカの女優で、キャサリン=ローズ。・・・・知ってるだろ?」
「ええ・・・・ハリウッドスターですよね。そんな人がなぜ?」
「わたしの親戚で、紐育華撃團の隊長を務めたこともある、大河新次郎さんからの推薦だ。彼女も、強い霊力を持っている。」

 キャサリン=ローズは数々の映画に出演し、24歳にしてアカデミー賞も受賞したこともある、世界的に有名な女優だ。
 大河新次郎は紐育華撃團の元隊士で、華撃團解散後は俳優事務所を設立。将来華撃團隊士に成り得る有望な人材を集め、表向きは俳優として育て、極秘裏に霊子甲冑の操縦などの訓練も積ませて、来るべき日に備えていた。キャサリンもまた、大河の経営する事務所の所属で、訓練を受けていた。

「では、我々の先輩というわけですか。」
「そうだ。彼女から学ぶことは多い。・・・・・が、君らが彼女に教えてやることもある。」
「我々が教えること?」
「・・・・・まぁ、そのうちわかる。・・・・とにかく、彼女は正午の便で成田に着く。誰かヒマな奴と一緒に迎えに行ってくれ。」
「は、わかりました。」

 大鳥が成田へ連れて行ったのは明日香だった。
 弥生とゆり子は霊子甲冑の整備中。メイリンは昼寝中。ヒマだったのは明日香だけだった。



 正午を過ぎると、国際線のターミナルから一人の女性が出てきた。
 黒い帽子をかぶり、サングラスをかけている。彼女の姿を見ると、大鳥は華撃團のマークが入った手帳を懐から出した。すると女性も同じ手帳をポケットから出した。

「あの人だ。」
「はい。」

 ドアを開けて女性を招き入れる。女性は周りを見渡し、車に乗り込んだ。

「Though I ask just in case, Are you Ms. Catherine = Rose?」(……念のために聞くが、キャサリン=ローズだな?)
「Yes.」(ええ。)
「I am Captain Tatsuo Ohtori. She is Asuka Yoshino.」(隊長の大鳥龍雄。そっちは隊士の吉野明日香だ。)
「I see.……日本語でいいわよ。話せるから。」

 明日香はキャサリンに挨拶をする。

「吉野明日香です。新人ですけど、よろしくお願いします。」
「……よろしく。」
「日本語、お上手ですね。」
「大河さんに教わったし、映画でも使ってたから、当然よね。」

車は劇場に向かって走り出す。
キャサリンは窓の外の景色を見ながら呟いた。

「……小さな街……」

明日香にも大鳥にもはっきり聞こえたが、二人とも何も言わなかった。
ニューヨークに比べれば、東京が小さな街に見えるのは仕方の無いことだからだ。



 劇場に着くと、今度は劇場を見上げて一言・・・・

「・・・・ちっぽけで汚い劇場ね。」
「築70年だからな、汚くて当たり前だ。」

 現在、劇場の外壁の一部が剥がれかかっているため、足場を組んで補修工事が行われている。外観は目に見えて損傷が激しいので、汚く見えて当然である。

「さぁ、どうぞ。支配人がお待ちです。」

 支配人室に入ると一基と和馬が待っていた。
 キャサリンはそれまでの生意気な態度から一転してピシッと敬礼し挨拶する。

「キャサリン=ローズ、ただいま到着しました。」
「……ご苦労、司令の大神一基だ。こっちは副司令の真宮寺和馬だ。」

挨拶をかわすと、キャサリンは鞄から一通の手紙を出した。

「大河社長からのお手紙です。」
「お、そうか。」

 手紙に一応目を通した後、一基は大鳥に命令する。

「大鳥、劇場内部と、地下施設の案内を頼む。」
「はい、了解しました。」
「それから、明日香。みんなをサロンに集めておけ。案内が済んだら、顔合わせをする。」
「わかりました。」

 三人が退室したあと、和馬も手紙に目を通す。

「……大河さんも、こっちを心配しているようだな。」
「ああ。フランスとアメリカでも華撃團再結成の動きがある。三国華撃團復活は、俺たちの活躍しだいで決まる。」
「それにしても……『性格に多少問題あり』とは。……大河さんも人が悪い。」

 新次郎からの手紙の文末には『キャサリンは性格に多少問題がある』と書かれていた。
 その意味はわずか10分後に判明する。メイリンが慌てながら支配人室に飛び込んできたのだ。

「大変だよ、大神のおじちゃん!」
「・・・・どうした?」
「新しい人と明日香が喧嘩してるんだ!何とかして!!」

 一基も和馬も「やれやれ」という感じの表情で立ち上がり、サロンへと向かう。
 行ってみると明日香とキャサリンが口論している。話を聞いてみると・・・・

「どうして私がキャサリンさんの身の回りのお世話をしなければならないんですか!?」
「新米がベテランの世話をするのは当然のことよ。つべこべ言わずに従いなさい。」

 さすがの大鳥も女優同士の揉め事に口を挟めない。
 しかたなく一基が割って入る。

「やめろ、二人とも。明日香、キャサリンの言う通り、新人は先輩の身の回りの世話をするものだ。」
「でも!」

 反論しようとする明日香だが、一基がその間を与えず、今度はキャサリンに・・・・

「ただし、キャサリン。君はそのことに関して、あれこれと明日香に文句を言ってはならない。」
「なぜです!? ハリウッドでは……」

 すると、一基がまた反論の暇を与えず……

「ここはハリウッドではない。つまらん空威張りは、ここでは無意味だ。」
「アカデミー賞をもらった私に向かって、空威張りとは何よ!!」
「その言葉(『空威張り』)の意味をわかっているのか? 君がやらないことを明日香がやるんだ。口出しは許さん。」

 結局、最後はキャサリンも一基の命令を承諾し、明日香は彼女の身の回りの世話をすることになった。
 翌朝から、明日香はその仕事をはじめた。「口出し無用」とキャサリンに釘は刺してあるが、そうだからと言って明日香は手を抜くような女ではなかった。
 キャサリンにとってはそれがむしろ不愉快であった。何かしら見返りを求めているように見えたのだ。




 その頃、ようやく動き出した花やしき支部の地下室に、三人の女性がいた。
 華撃團副司令並、藤枝さつき。和馬と同じ副司令格にある大幹部である。彼女の祖母は藤枝かえで。帝國華撃團二代目副司令である。

「みずき、工場の様子はどう?」
「全ての設備の再点検が終わりました。すぐにでも始動できます。」

 片山みずき。本来の任務は劇場の売店で売り子を担当する少女であるが、花やしき支部再始動にあたり、泊り込みで工場の整備を行っていた。

「ナギ、そっちは?」
「技術工廠も完璧です。これで万全ですね。」

 大村 渚、通称:ナギ。奈良出身。本来はおあいと協同で劇場の事務を担当している。みずきと共に花やしき支部技術工廠の整備をしていた。

「そういえば、ナギは明日香と知り合いだそうね。」
「ええ。よく一緒に遊んでましたよ。」

 渚と明日香は奈良の同じ町内に住んでいた。二人はとても仲がよく、いつも一緒に遊んでいた。

「ナギも華撃團に入っているってことは、彼女は知っているの?」
「いいえ。驚く顔が見たいから言ってません。」
「そう、じゃあ、明日はその驚く顔が見れるというわけね。」

 三人は翌日には劇場にもどり、通常任務にもどる予定である。
 渚は明日香がどんな顔をするのか楽しみにしていた。




 翌朝、食堂でメイリン、弥生、大鳥の三人が朝食をとっていた。
 ゆり子は地下の格納庫で霊子甲冑の最終調整中。キャサリンは身支度中、明日香は仕事中であった。

「明日香も、愚痴一つこぼさずによくやってるわね。」
「そうだね。ボクだったらとっくにぶん殴ってるよね。」
「ハハハ・・・・メイリンは強いからね。」

 するとそこへ花やしき支部にいた三人がやってきた。

「あら、大鳥君。おはよう。」

 さつきの姿を見ると大鳥たちも立ち上がって敬礼する。

「お帰りなさいませ、副司令。」
「花やしき支部のほうは、もうよろしいのですか?」
「ええ、設備は全て復旧したわ。今日からようやくこっちの任務に戻れるというわけ。」

 真面目な話をしている三人と対照的に、メイリンと渚、みずきの三人は・・・・

「ねぇねぇ、花やしきって遊園地なんでしょう?ボクも行きたかったなぁ。」
「メイリンったら、遊びに行ったんじゃないのよ?」
「よく言うよ。みずきったらサボって遊んでたじゃない。近所の子供たちと一緒になって。」

 通称、二代目三人娘と言われるあおい、渚、みずきの三人の中で、みずきは16歳と一番若い。まだまだ子供っぽいところが抜けておらず、よく小さな子供と一緒に遊んでいる。
 そこへ、仕事を終えた明日香がやってきた。

「あぁ〜……お腹すいた。」
「明日香!」

ふいに聞き覚えのある声が聞こえて、思わず顔を上げた。

「ナギ?……ナギじゃないの!」

 二人は手を取り合って久し振りの再会を喜んだ。

「久し振り、明日香。元気そうね。」
「うん。ナギも元気そうでよかった!」

 今度は支度を整えたキャサリンがやってきた。朝も早くから化粧をし、外出着に着替えている。

「やあ、キャサリン。こんなに朝早くからお出かけか?」
「ちょっと、食事に。ここの食事は口に合わないので。」

 と、短く答えて嫌味も言って去っていった。それをさつきはクスクス笑いながら見ている。

「……副司令?どうかしたんですか?」
「え?……いえ、大河さんの言っていた通り、『性格に問題あり』ね。」

 その頃、一基はキャサリンのことで大河新次郎に国際電話をかけていた。

「ええ、来ました。昨日ね。・・・・さっそく騒動を起こしてくれましたよ。」
『ハハハ・・・・彼女ぐらいプライドの高い女優はいない。が、それが強さでもあり、また弱点でもある。彼女も、それはわかっているはずだ。』
「そう願いたいですよ。・・・・・こちらへはいつ?」
『こっちの仕事が片付きしだい・・・・だから6月末か7月の頭だな。』

 大河は俳優事務所を経営している。その一方で来るべき日に備え、華撃團隊士に成り得る若手を育てている。一基や和馬よりも多忙な日々を送っている。



 その日の午後、警報が鳴り響き、全隊士が作戦指令室に集合した。
 現地の偵察部隊から入ってきた情報を和馬が隊士に報せる。

「日本橋に脇侍が出現した。数は10機。すでに破壊活動を始めており、走行中の車や周辺の建物、通行人に被害が出ている。全員現地に急行し、敵を殲滅せよ。なお、今回の任務より霊子甲冑に乗り込んでの戦闘になる。」

 続いて大鳥が起ち、作戦の説明を行う。

「知ってのとおり、日本橋は交通の要所だ。道路も無数に交差している上に重要な建造物も多い。ただちに出撃し、これ以上被害が拡大するのを防ぐのが今回の任務だ。・・・・・東京華撃團、出動する!!」

 全員敬礼し、格納庫へと向かう。
 主力兵器となる霊子甲冑は光武・神武・天武・光武Fといった過去の霊子甲冑に基づいて開発された。名前は「新武」。ただし、各機にはそれぞれコールサインが付けられている。

乗組員・・・・・「コールサイン(読み)」・・・・・・・・・「和訳」
大鳥・・・・・・「SABER(セイバー)」・・・・・・・・・「剣」
明日香・・・・・「EAGLE(イーグル)」・・・・・・・・・「鷲」
弥生・・・・・・「SWAN(スワン)」・・・・・・・・・・・「白鳥」
ゆり子・・・・・「RECOVERY(リカバリー)」・・・・・「回復」
メイリン・・・・「PHONEX(フェニックス)」・・・・・・「火の鳥」
キャサリン・・・「LIGHTNING(ライトニング)」・・・「閃光」

 盗聴などで正体が外部に漏れることがないよう、戦闘中はこれらのコールサインでお互いを呼び合うことになっている。

「セイバー、起動確認!」
「Lightning, ready to GO!!」(ライトニング・行けるわ!)
「スワン、出撃準備よし!」
「リカバリー、行けるで!」
「フェニックス、オッケーだよ!」
「イーグル、準備完了です!!」

 各機体から起動完了の合図が出撃指揮所に入る。やがて轟雷号への積み込みがはじまる。
 花やしき支部地下に保管してあった弾丸列車・轟雷号と武装飛行艇・翔鯨丸は既に修理と整備が完了しており使用可能であった。

「轟雷号、射出準備よし!」
「射出!!」

 バシュウウウウウウゥゥゥゥッ!!
 ものの数分で銀座から日本橋に到達。太正期から残っている射出口を使って地上へ出る。




 地上では10機の脇侍が破壊活動を行っている。
 その様子を近くのビルの屋上から眺めている人影が5つある。

「フン……この間俺たちの邪魔をした奴らは、まだ現れないのか?」

 紅 龍。神龍軍団・五人衆の一人。炎を自在に操ることが出来る。

「フフフ……兄上、私たちの力に恐れをなしているのでしょう。」

 蒼 龍。神龍軍団・五人衆の一人。紅龍の妹で水の攻撃を得意とする。

「そうだとしたら、私たちの敵ではないわね。」

 翔 龍。神龍軍団・五人衆の一人。強風や竜巻を自在に起こすことが出来る。

「まったくだ。もっとも、あの伝説の帝國華撃團のまがい物。恐るるに足らん。」

 嵐 龍。神龍軍団・五人衆の一人。雷撃を得意とする上に、変装の名人で、いかなる顔にでも変装できる。

「フフフ・・・・・大願成就の障害となるものは、全て排除する。」

 飛 龍。神龍軍団・五人衆筆頭。筆頭だけあって、その実力は他の四人の比ではない。
 彼らは神龍軍団と名乗る、人型降魔の集団である。1年前より暗躍しており、巨大降魔を蘇らせた。日本征服の手始めに福岡市を破壊、続いて東京を攻撃したが、東京華撃團の迎撃によって撃破された。

「そこまでだ!!」

 6機の霊子甲冑が水中から飛び出してきた。

「あいつらは……」
「なるほど……こいつらか。」

 飛龍が不気味な笑みを浮かべて、地上へ瞬間移動した。

「あの帝國華撃團のまがい物か。お前たちの力、見せてもらおう。」

 飛龍は大型の魔操機兵に乗り込んだ。
 モニター画面からその様子を見ていた大鳥が全機に命令を通達する。

『全機に告ぐ。隊を二手に分ける。スワン、リカバリー、フェニックスは脇侍を掃討せよ。俺とイーグル、ライトニングはあの大型魔操機兵を叩く!』
『了解っ!』

 大鳥の隊が飛龍の前に立ちはだかった。

『貴様は何者だ!』
『・・・・我が名は飛 龍。神龍軍団・五人衆筆頭である。貴様らは?』
『東京華撃團!』

一応名乗っては見たが・・・・

『フン・・・・知らんな。』
『私たちの名を知らないようじゃ、あなたもあまり大したことないわね。』
『これから死に行く者の名前など、知る必要は無い。』

 二度も愚弄されて黙っているほど、キャサリンの手は遅くない。
 完全にキレてしまい、猛然と飛龍に向かって突進していく。

『ライトニング!!』
『私をバカにするやつは絶対に許さない!!』

 プライドの高いキャサリンは安い挑発に乗ってしまった。

『(安い挑発に乗りおって……)バカめが!』

 ドドオオオオオオォォォォッ!!
 突然、猛烈な嵐がキャサリンに襲い掛かった。

「なにっ!?」

 突風によってバランスを崩したライトニングは転倒し、建物に激突した。

『キャサリンさん!』
『名を呼ぶな!!』

 コールサインをつけたのは盗聴などで素性が外部に漏れるのを防ぐため。通信で名前を呼んだのでは意味がなくなる。

『イーグル、行くぞ!』
『はいっ!』

 2機の新武が猛然と突進する。
 それを見て飛龍の魔操機兵が再び戦闘態勢に入った。

『貴様らも死にたいか!』
『死ぬのはそっちだ!』

 大鳥機が刀を抜き、刺突の構えをとった。そして放つ技は・・・・

『龍飛鳳翼・三段刺突!!』

 あの沖田総司の得意技である。一見すると一度の刺突に見えて、実は同時に三度刺突を繰り出していたと言われている。

『なっ!?』

 ドドドッ!!
 まさか三段刺突が来るとは思わなかった飛龍はまともに喰らってしまいさらに……

『はあぁぁぁっ!!』

 明日香機が魂身の一撃を繰り出し、見事命中。さらに……
 ドガアアァァッ!

「やあああぁぁぁぁっ!!」

頭に来たキャサリン機が瓦礫の中から突如飛び出し、飛龍機に体当たり。
三人の攻撃を同時に受けた飛龍機は大ダメージを受けた。

「うぬぅっ!?……フフフ……なるほど……降魔が敗れたわけだ。だが……お前らの力、見切った!」

 反撃しようとする飛龍だが、突然声が聞こえてきた。

『待て! 飛龍……今は戻れ。』
『首領……致し方ない……今は退くか。東京華撃團とやら、次に会う時は貴様らの最後だ。首をよく洗っておくことだ!!』

 それだけ言い残すと飛龍機は黒い竜巻の中へ消えていった。
 キャサリン機が逃がすまいと追跡しようとするが・・・・

『ライトニング! 追跡はするな。深追いは火傷のもとだ。』

 移動指揮車の和馬から通信が入る。
 脇侍隊を片付けた弥生たちも合流し、轟雷号に乗って本部へ戻っていった。




 本部へ帰還すると、すぐに作戦指令室へ集合。戦闘の反省会が行われた。
 むろん、名前を叫んでしまった明日香や、安い挑発に乗ってしまったキャサリンの行為も議題に上がり、一基や大鳥が二人に注意した。そのほかに……

「弥生、ゆり子、メイリン……脇侍10体に手間取りすぎだ。」

 たしかに弥生たち別働隊は脇侍の始末に手間取った。しかし、和馬の言葉に弥生も反論する。

「しかし……10対3では……」
「相手は脇侍だ、つまりは雑魚だ。降魔ならいざ知らず、雑魚に手間取っていたのでは先が思いやられる。」
「……」
「降魔は脇侍の何倍も強い。そんな連中が大挙して攻撃してきたら、今のお前らじゃ勝ち目は無い!早いところその危機感を持て!」

 和馬が珍しく声を荒げている。それほど、今日の戦闘が気に入らなかったのだろう。
 だが、そんな和馬の発言をもっと気に入らない人物がいる。キャサリンである。

「フン、自分たちは見てるだけだから、何とでも言えるわよ。やってる方は結構しんどいのよ。」
「そういうセリフは結果を出してから言うことだ。今日みたいに安い挑発に乗って、敵の罠にかかるようじゃ、大河さんには悪いが、お前をクビにせねばならん。」
「フン、わかったわよ。結果を出してやろうじゃないの! そのときになって吠え面かくんじゃないわよ!」

 といってキャサリンは勝手に作戦室を出て行ってしまった。

「『性格に問題あり』・・・・か・・・・あれを治すのはちとホネだぞ。」

 一基が頬杖をつきながらそう言った。

「大鳥、お前にあれを治せるか?」
「はい。何度でも、何度でも説得して、仲間と連携することの意味を伝えます。」
「うむ、よく言った。お前を隊長に任命した俺の期待に応えてくれよ。」
「はいっ!」

 こうして、東京華撃團の初めての大規模戦闘は終わった。
 だが、これはホンの序章に過ぎない。これから敵はどのような攻撃を仕掛けてくるかわからない。

 時は平城11年5月。これから首都・東京は梅雨に入る。
 東京華撃團最初の大ピンチが訪れることになろうとは、このとき、誰も知る由もなかった。

 


次 回 予 告

動き始める神龍軍団
謎に包まれた敵……
私と隊長は情報を得るべく、敵の懐へ……
すべては希望という名の
未来のために……

次回 サクラ大戦F
『脇侍工場を爆破せよ!』
平城櫻に浪漫の嵐!

隊長、あなたを信じます。

 

キャラクター紹介

大鳥 龍雄(Tatsuo Ohtori) C,V:山口 勝平
身長:180cm  体重:72kg  生年月日:1977年1月3日  年齢:22歳  出身:長崎県島原市  血液型:A
特技:二天一流  階級:花組隊長  特殊装備:剣魂逸敵  コールサイン:セイバー
 元海上自衛隊所属。護衛艦『ひえい』に乗船していた時、降魔と接触。負傷した艦長に代わって指揮を執り、防衛庁の許可無くして実弾攻撃を行ったため、謹慎させられた。しかし、大神一基に誘われて東京華撃團に入隊、主力部隊花組の隊長に任命される。
 二刀流の使い手で、戦闘では文字通り切り込み隊長として暴れまわる。自らの撃破数よりも味方全員を連れ帰ることを何よりの誇りと考えている。両親を亡くしているらしいが、当人は家族のことを一切語ろうとしない。
 実は必殺技の『龍飛鳳翼』の名前が先に付けられ、『鳳』と『龍』に因んで大鳥龍雄と名づけました。


第三幕へつづく……

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